松本直哉
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おしてるやなにはのくにもみどり濃きテルミドールとなりにけるかな
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夏の日を歌ひくらして飽かざらむ日暮れていまだせみなきやまず
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わがこころ鳥にあらねばうつせみのこのよをさけてたつ空ぞなき
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夏 日暮れ くちなしのはな 遠花火 わがなつかしき形而下のもの
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知らざりき目もとすずしきをみなごの庭を一期のゆめと果てしを
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鎌倉や阿弥陀如来のながあめにもだしおはすやしとどぬれつつ
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さみだれにつねよりまさる思ひ河身を浮きくさのながれながれて
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みみたぶのやはらかく練るしらたまの知られぬ恋にぬるるそでかな
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そばにゐてくださいませな蝋燭のなみだながれてつきるときまで
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短夜に逢ひ見しきみを帰さじと櫂をかくしぬ天の河原に
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ながらへば憂きこと多き木下闇むくげのはなのすずしげに咲く
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夏ごろもうすきなさけのひとゆゑにうれひのふかく海に石投ぐ
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なげきつつ音をのみやなく露の世にうまれし蟬のあさなゆふなに
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ともづなを解けどいづこにわたるべきあやめもわかぬ川べりの霧
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四つ角の花替へられてあたらしくかなしみもまたあたらしいまま
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さみだれにたなばた飾りぬれにけりへだたる恋をこゆる櫂なく
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きみがためサラドをつくる夏の宵来世は女に生まれかはらむ
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かんづめのアンチョビとなりぴつたりとからだかさねる短夜の閨
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ときたまごほそくながして火をとむるなつのひぐれのあはきかなしみ
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千のキスふらせてくださいたましひが小鳥となつてとびさるまへに
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白きのどみせつつ麦茶のみほしていのちみなぎるみなづきをとめ
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みじか夜のゆめのほとりのほととぎすひとこゑ鳴きしのちのしづけさ
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不発弾遠巻きにしてひと絶えしまひるまのまち鳥なきわたる
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上あごに舌のふれつつるりまつりこゑにいだせば息の緒ふるる
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住むまちにあらまほしきは風船屋本屋豆腐屋そしてわが君
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鳥のかげよぎるつかのま見しひとのおもかげゆゑにながくなげきつ
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いかにして韃靼海峡渡りけむもろくはかなくしろきその翅
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あさなゆふなをやみなく降るさみだれのみだれてものを思ふころかな
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なぎ倒してもふりかへらずにかけぬける陸上の子髪なびきつつ
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ひとことも口をきかずにすぎし日のをはりにかをるくちなしの花
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