ミツバチ便り
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鏡向こうアイシャドウぬる目の辺り亡き母映り浅く息吸う
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あやとりはいつも私で絡まった田中みな実になれないわたし
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母遺す細い鎖の腕どけい母が逝きたる三時をしめす
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天界の母と俗世のわたくしが共にみている大き満月
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擦りむけたひざもほっぺもものとせず補助輪はずす背中の翼
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落蝉を拾いて夏の盛り逝く生きるものだけ死ぬことができ
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砂の立つサッカーコート日に焼けた少年の脛まぶしい柱
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夜の雨あなたを過去にしてしまう手を伸ばしても夜はつかめず
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赤と青闘う空の夕暮れをのぞむ私の胸は静かだ
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炎天の坂のぼりきて星祭り振り返らむとひとりきりかな
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君の手が蛍をそっと包んでる世界で一番優しい灯り
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いつもより暑い夏でもとうきびをレンジは使わず茹でようと思う
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今朝もまたきっと明日の朝もまた私の死後も誰かが米とぐ
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生きていることは辛さのビブラート紫陽花重く雨に撃たれて
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かわいらしいカフェのメニューに「かぷちーの」ふぅんなるほどふぅんなるほど
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キャベツ喰む姿がかわいいかわいいと言われし蟹を羨ましく思う
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落ちそうな夏椿見るそんな目でいつでも私を包むべきよね
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洗濯機回り続ける水眺む そんな気持ちで走る息子見る
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死神を騙す男の落語聴き白髪を染めるわれ誰騙す
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ゆうべ見た夢のつづきとまごうほど百合に集いし蝶々の宴
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月光はカサブランカを香らせて真みずのような純な白さも
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そぼ濡れて帰りし我が子の制服を干せば雨よりひなたの匂い
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キッチンに入る夕陽でカレー煮る「今朝はごめんね」言ってみようか
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美しく老いるだなんて嘘なのよ ほらあなた見て上弦の月
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扇子出し扇ぎ笑ってお喋りし小さな嘘も畳んで仕舞う
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やわらかくつぼみほどいた紅い薔薇浅く目覚めて朝日を見てる
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まだ青きトマト湯がいて皮剥けば香り顔出す小さき夏は
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わたくしに夢があったか忘れたが夏に向かってひまわり植える
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あんなにも輝いているあの星が嘘みたいもう尽きてるなんて
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桔梗挿す花器は静かに受け入れて茜さす夕 美の確かさよ
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