カミハリコ
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記憶をたぐる網の目がだんだんと大きくなって月さえこぼす
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飲み込んだひかりを夜に盗まれないようにしっかり隠してなさい
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薬なしでは眠れない冷えた手が去ってしまった静かな夜は
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運命だ 夢で落とした左手を君が拾って来てくれたこと
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二回目のライヘンバッハ(深呼吸)ほんとうにこれが最後の事件?
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僕じゃない人のとなりで長生きをしてくださいね(お先に失礼)
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生ぬるく塩からくてもこれは雨、感情線を埋めるのは雨
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沈黙の長さを別の感情にすり替えられてしまう雨の日
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ストローを噛むより柔く舌を噛むあの子は星ほど甘くないので
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錆びなくて丈夫な首輪をはやくくれあの子の喉を噛み切る前に
5
喉元を過ぎた熱さが胃を破りそれでも冷めないなんて悪夢
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おしゃべりをやめないひとの右上に『✕』がないかと探してしまう
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やわらかい皮と肉とにくるまれてそれでも軋む強情な骨
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それぞれの孤独と自由の境目が乱反射するアパートの窓
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太陽のあかるさを知らないままで生きてる方がしあわせだった
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特製のインクで書いた手紙から嘘がぺらぺら零れ落ちてる
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あのひとがほほえむ写真のモノクロにツツジの赤がひどく滲んだ
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たぶん時速二〇〇キロで会いに来る 新幹線と同じ名だから
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汚れないけれど遅刻はしてしまうデジタル仕様のチョコレート
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天国の番人ふたりで蹴り倒しきみは現世へぼくは地獄へ
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隙間から君の魂こぼれますツギハギ注意報発令中
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ほんものはひとつだけです」まやかしの言葉には耳を塞いでくれ
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「お嬢様」五十年後もそう呼んでお側にいます約束します
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どろどろに溶けてわたしは終わるけど来世は同じ花になろうね
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喪失の痛みに揺れるおとがいを砂糖にまみれた両手で撫でる
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夜へ放り出した体から落ちる個体液体まざりあえない
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君の頸切り裂いたならきっと星が溢れるだろうはやく見せて
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混じり気のない殺意だけ転がして明日の運勢占ってみる
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占い師めいた過剰な厳かさ(ゼムクリップをかきまわす音)
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昼下がり幼稚園児の足音に揺れて応えるチューリップの赤
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