カミハリコ
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こわいならこわいものになればいいおしえてくれたあのひとは、いま
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密室に横たわる安眠知らずの男の涙は不透明
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夕焼けがこんなにひどい色なのに部屋はふかく藍色に沈む
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何度刺されても塞がる血管や皮膚みたいには生きられなくて
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ひとりよりふたりの方がさみしいと感じるわたしはこちら側です
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齧らずに丸飲みしてくれるきみの前世は多分やさしいピラニア
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大切な中身を守る棘なのに邪魔者扱いされる不条理
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それぞれの地獄におちる僕たちを見守っている曼珠沙華たち
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あのひとの煙草の匂い覚えてるのは返せなかった文庫本
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何回教えても覚えなかったあの花の名前 そう百日紅
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まっしろい姿で油断を誘いつつ口中やけどさせるサディスト
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なにもかもひっくり返る日々だからいつか見たいね月の裏側
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体温を押し付けるだけの抱擁に幽霊ゆらゆらゆらゆれる
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舌先でなぞったほうがよくわかる君の親指ささくれだらけ
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一度だけ重なった影と体温は三十秒後朝日にとける
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月に誓っちゃだめだってジュリエットじゃなくてももうみんな知ってる
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お互いが人間に生まれ変わったら食物連鎖の果てで会おうね
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あとふたつ星を沈めてから行くよもう少しだけ月で待ってて
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月光に影を喰われてしまわないようにしっかり縫い付けておく
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「こどくだね」孤独より先に蠱毒が思い浮かぶ人間になった
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きみのこと丸呑みしたいなんてこと思うだけだし小指だけだし
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そっくりなふたりのあいだに横たわるほとんど見えないキリトリ線
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エンドレス平日エンドレス日曜どっちもそれぞれ怖かった
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脆弱なアームで今日も掬うから誰かわたしを救ってくれよ
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透明なマニキュアで染めた薬指咥えるたびに思い出してよ
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窓ガラスいちまい隔て外は嵐という設定で二度寝する
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暦より己の肌で感じ知る夏の終わりはそこまで来てる
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夏季休暇終了同時告白後失恋全治二十四時間
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ぐしゃぐしゃの紙袋へと吐き出した無味乾燥のねがいごとたち
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珊瑚に生まれ変わったら死んだあと指輪になってあなたと暮らす
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