カミハリコ
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陽の当たるあの子の隣にいるときは海の中で息してるみたい
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易々と防衛線を飛び越えた希死念慮蹴り生きよ明日へ
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粘膜でなぞる背骨はいつもより甘くて痛いやっぱり罰だ
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記憶を奪われてもきっと思い出す背骨に這わせる夜のつめたさ
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からっぽの棺にすがって泣くふりが上手になっただけの晩夏だ
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ローファーに夢から抜いた爪先をねじ込み走る境界線へと
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なぐさめてくれなくていい(ないてない)わたしがわたしをゆるせないだけ
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怖いって言えばよかったくらやみでひかりはひかりのままで死ぬのに
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うつくしいものうつくしくないものも両方握ってどっちを開く?
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一円より軽いいのち一円玉の重さは忘れてしまった
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いつまでもふたり踊ろうどちらかが骨になっても塵になっても
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「高一の、そう、夏だった」「わすれたい?」「思うだけ傷が深くなるね」
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秒針が刻むは猶予或いは身体 見えるよ君の切り取り線
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六畳間 麦茶の氷が貫く死刑宣告じみた涼
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アスファルト抉ったみたいな目をしてごめんなさいを繰り返す夜
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くびすじで翅をやすめるアサギマダラたましい遠く連れ去ってくれ
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縁側でレースはためくここは海 死者が手招きカーテンコール
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夢でさえ空を飛べずに悔しがることもなくただ地を這うばかり
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誕生日 今日ですべてを終わらせる覚悟が揺らすあおいロウソク
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「あの青で塗り潰したら合図して」まっすぐおちる螺旋階段
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「死ぬくらいなら逃げればいいのになぁ」その顔面を蹴り飛ばしたい
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何度目の夏が過ぎても一ミリも忘れてないよ ずっと生傷
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この先もあなたのひとみを曇らせるたったひとりでありますように
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背を向けたひまわりだけがやさしくて他のやつらはみんなうそつき
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陸上でこんなに息があがるのはわざと進化を止めているから
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星ノクズ ひきがね引いてぶちまけて倦んだ心に風穴開けろ
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掬えない感情だった 大切なものを残らず捨ててきたから
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左手の痣も背中の傷跡も見えなくなってしまえばおわり
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夏生まれのくせに夏が苦手だった彼の代わりに夏を見送る
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感情を殺し続けた血の海でぼくらは泳ぎ続けるだろう
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