まるや
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日常短歌と創作三国志短歌

むきだしの窓からそそぐ陽のひかり置き去りにしたしあわせの残滓
4
入念な毎夜のケアで速度下げ飛び出し注意シミ吹出物
12
泣いたあといびつに笑うその声がぼくを飛び越え空に架かった
7
走るきみを追いかけた十歳 摺り足のきみを待つ二十二歳
5
おそろいのカップが嬉しかったけどきみのはもっと苦かったんだね
7
散るせつな走るフィルムのその最後きみのことばが嘘でよかった
6
ふたりで焼いたきみ宛てのラブレター落ち葉の下であたため孵す
6
「きみが好き」そっとひとみは逸らされたちいさな嘘をつくときの癖
9
入念におめかしキメてスタンバイ踏み出す合図はきみの返信
12
はじめてのおとなサイズの浴衣着てぼんぼりが照らすおそとのお風呂
10
恋をするあの子のうつくしいひとみ絶望を知る海溝の黒
5
磨いては零して汚しまた磨くいたちごっこが生きてるあかし
4
不器用なきみはわたしのてのひらに頭を押しつけ甘える合図
9
気温とは裏腹にさむい宵の口かすむ視界にもういないいぬ
6
くらやみにきみが残したひかりの尾わたしをみちびくかすかな背中
8
光線にきみのまつ毛がまたたいて世界を駆ける虹色の風
5
膝のうえ冬の陽気にまどろんだおひげ弾けばむあと鳴くいぬ
13
わたしさえ気づいていないわたしたち重なりあってわたしのかたち
8
ひと冬の思い出残し去るきみを溶かせなかったわたしの温度
12
キッチンにきみの薫りの置きみやげ庭に撒いては鳩を待ってる
11
午前5時地下にならんだ在庫からきみが運んでくる夜明け色
11
背伸びしたよそゆきヒール高らかにまだ泣かないで左の小指
13
夜は逝くすべての嘘を引き連れてきみのシリウス撃ち落としても
11
ふさがらぬ風穴を空けたあなたの灰が咲かせたアネモネの花
7
天井の向こうにひでき大学生モールスじみた土曜のスヌーズ
5
血も星も呪いも持たぬわたしたち繋ぐ手だけが家族のあかし
6
午後三時通り魔的に投げられた下品なキスであたしは目覚めた
5
ぼくを真夜中の砂場に縫い止めるあの満月ときみが産む影
7
剥ぎ取ったカーテンを纏い光線の下で踊るわ身を焼かれても
5
はじまりもおわりも同じよぞら色わたしを抱くカシミヤのコート
10