まるや
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日常短歌と創作三国志短歌

この部屋でなくした夢を掘り起こす これは学生生活の化石
8
はじまりのひかりを招く大任を果たし誇らしげな昼の窓
6
積み上げた過去がわたしをつくるなら 尖った氷の上でため息
8
きみの目がゆらめく緋色を反射して秘めた想いが溢れこぼれる
10
くらやみにひしめく星は血走ってわたしの罪をつまびらかにする
7
あの時と同じ場所から街を見るきみが濾過したひかりをあびて
8
とおき日の忌むべき記憶は繋がれるママの寝物語に隠して
6
朝がぼくの世界を焼き尽くすころきみはまだ夜の水槽のなか
10
この夜の終わりを告げるきみの声ぼくのやさしいきみを切り裂く
3
濁流に逆らうふやけた指たちに女神の脚が掴まれ沈む
4
光線を割いて飛び立つしろき羽根西へ西へと朝を連れてく
10
小屋の奥ふるえるいぬが吸い付いた毛布は遠き親いぬの色
11
読み進むほどに色付きゆく頬を盗み見るぼくのま白いノート
5
ふぞろいな胸の縫い目に味噌の染み家庭科室のちいさなシェフら
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生い茂る草の波間に横たわり沈めてほしい冬になるまで
4
初恋のすべて託した日記帳チョコミント味の鍵を飲み込む
8
夜半過ぎごみを丸めて気がついた知らない女性とあなたの名前
5
てのひらに収まるサイズの宇宙から手軽に受ける女神の啓示
5
棚の奥にきみの魔法のティーポットあまい薫りの記憶だけある
6
果てしなきひかりの雑踏かきわけてきみに届けるあの日のセルフィー
4
風を避けわたしのかげに立ついぬの逆毛の背中に埋めている指
9
部屋干しのマントは裂いて燃えるゴミ軽やかに鳴らす真っ赤なヒール
5
まだ明かき東に浮かぶみかづきはきみの最後の空中ブランコ
8
裾つまみおじぎする影が闇に溶けきみがつくった世界が終わる
4
駆け下りた堕落の坂に陽が沈むここにきたからきみに会えたの
6
逃がさないつめたい嵐の中心でわたしの熱がきみを融かして
7
堅牢な知識の塔を築き上げ彼はてっぺんで薔薇を育てる
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翼なき鉄の棒が語る神話 ここにはかつて人間がいた
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ブラウスの下で彼女の背を撫でて鋭角を均す細い肩紐
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ひかえめに微笑みかしげる白い首あの子の舌は三枚あるとか
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