医師脳(いしあたま)
0
13
投稿数
901

 半世紀以上も昔のこと。
 青森高校で古文を習わされた。教師の名は忘れたが、脂ぎったオジサン顔と渾名だけは覚えている。
〇「無駄だよ」と十七のころ厭ひたる古文の教師の渾名は「ばふん」
 そんな生意気盛りが古希をすぎてから短歌を詠もうとは……。
「一日一首」と詠み続け、気づけば(内容はともかく)数だけは千首を超えた。
 いわゆる「白い巨塔」で生息していた頃の習慣だろうか。
 自作の短歌に『しちじふのてならひ』と名付け、医師脳(いしあたま)を号した。
〇七十歳の手習ひなるや歌の道つづけてかならず辞世を詠まむ
〇満帆に〈老い風〉うけて「宜候」と老い真盛り活躍盛り
〇うれしきは毎朝いるる珈琲に「おいしいね」と言ひて妻が笑むとき
〇生き甲斐が働き甲斐なる生活に「老い甲斐あり」とふ痩せ我慢もなす
〇「先生」と呼ばれ続けて半世紀いまや符牒のやうなものなり
〇「日々一首」と詠み続けたし一万首。吾も百寿の歌詠みとならむ
〇人生の川にも澪木(みをき)を立つるごと刻舟とならざる一日一首を
〇老いはてて彼も汝も誰か薄れ去りいずれ消ゆらし吾の誰かさへ

豪雪に出勤できぬ老医われを出迎へにし職員の笑顔
10
十日ぶりに襲ひし大雪と七日ぶりの出勤かさなる不運を嘆く
9
過去最高126センチもの大雪なり。除雪機で手伝ひたまふ隣人ありがたし
10
思いがけぬ旧友よりのメイルにて「明鏡に載らぬが…」と生存確認
9
大雪の予報を聞きて吾が妻はひび入りし雪ベラをなでつつ「がんばれ!」
10
冬の陽を背に受け目覚む。机上なるモニターに医師脳いしあたまの文字、思はず苦笑
6
パソコンの評価はメモリとCPU。老医わが自負は経験と情
9
医師脳とふ我が筆名だけ出るモニターで三十一文字みそひともじのあそびをすなり
11
アイコンをワンクリック!で立ち上がる縦書き画面に一首も浮かばず
8
デコボコで擦れ違ひがたき雪道にメーターだけ進む出勤タクシー
10
WIN11の脆弱性を知りてより手元のPCは皆ZORIN化せり
7
ZORINとWIN11を詰め込みしミニPCは机上に鎮座す
6
小寒の束の間の陽に冠雪のドサリと落つるやいとこぎみよき
10
OSをZORINに替へしパソコンに「同行二人」と語りかけをり
8
見てみたい! クロムブックで育ちたる小学生の作る近未来
9
ENTER!でClamAVスキャン中・・・ながるる白文字が睡魔を誘ふ
7
老残機の日本語環境ととのへて令和七年も縦書きで詠む
12
元旦の雪をかづきて津軽の木は朝陽にかがやき春を恋ひをり
10
新しき五年日記にペンを執り八十一歳はちじふいちの己をおもふ
13
色あせし年間暦を新たにしもう終わりかと大晦日の夕
10
「易怒性」が変換されぬパソコンにため息まじりで単語登録
8
降り積もる雪にうらみごと漏らしつつ雪ベラを振る年末休暇
12
「すどうさん」と呼び入れるたび思い出す。Super UserのSUDOコマンド
5
年越しの我が家の味を子らにと言ふ妻の思いをクロネコに託す
14
画面ボケるフロッピー時代の‘VAIO’にはDNAR「おつかれさま!」と
7
史上初とふ八十センチ余の積雪に玄関先は雪の回廊
9
OSを友分途(UBUNTU)に変へし三台の医師脳ともども喜寿を迎へむ
8
引越の予行くりかへし新年はパソコン全て友分途うぶんとにせむ
6
OSを友分途(UBUNTU)に変へマカフィーの契約解除し妻に褒めらる
6
OSをMac・Winと遍歴し終の縁よすがにUbuntu与ふ
5