彩雲2
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八日目の蟬のかなしび鳴けぬ空 胸の痛みを風よ連れ去れ
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鷺草は風をよみすぎ離陸せず 吾のごとくに明日をためらふ
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人はみな誰かの子供衣被(きぬかつぎ) 塩ふる母の背(せな)のぬくもり
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子午線に添ふて南へ去ぬ燕 空の高さを残していきぬ
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流星は神の槍投げ煌めけり 行方は誰も知る人はなし
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遠近に方舟(はこぶね)浮かべこの地球(ほし)は神の怒りの仔細語らず
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夏惜しむ恋はうたかた砂時計 寄する白波跡を消しゆく
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身じろぎもせず炎天の風見鶏 吹かぬ時代の風を待ちおり
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編み笠に涼しき瞳風の盆 坂の町並み灯はゆれて
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佐州へと渡る番の朱鷺の影 夕日に溶くる鴇色の羽
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水門を開けろとねだり鯔跳ねる 川辺の犬も吠えて応へる
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夏がすみ隠す妙義嶺鷹戻し すくむ足元雲の湧き立ち
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わたすげの浄土平の舞踏会 風のタクトに揺るる白妙
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奥美濃の郡上八幡秋つばめ 雲井はるかに影も消へゆく
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ワープする術は明かさぬ鬼やんま 瞬くあはひ夏は消へ去り
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花車(きゃしゃ)な娘が三味を操る風の盆 笠の隙間に月は照らさず
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華やぎも何処か哀しき風の盆 そっと寄り添ふ胡弓の調べ
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メゾフォルテ奏でよ雨の遠蛙 眠りにつきし街のルフラン
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黄昏に鯔の寝返り汽水域 銀のうろくづ夕日に晒し
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秋天へ鳶の滑翔伊良湖岬 恋路が浜に寄せる波音
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ことづてを螺鈿(らでん)の翅へ銀やんま あの日見上げし宙をめざして  
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烟る街黄砂降る日の点描画 夕日溶けゆく砂のキャンバス
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茜さす京の町屋の夕化粧 簾ごしなる白き項よ
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「遅くない」齢六十蟬しぐれ 剣客武蔵ふつと呟く
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蟬しぐれ被爆ピアノと合奏す いま生きる身の命ふるはす
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かなかなと消へゆく風のビブラート 「また何処かで」は別れの言葉
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ソプラノにバスで応ふる牛蛙 夜の静寂にタクト振る風
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蜩のか細き聲に暮るる鄙(ひな) 風よりほかに訪ふ人もなし
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亀鳴くや涙腺ゆるぶ無言館 声なき声の満ちわたる中
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石庭のさざ波うごく蝶の翅 一瞬にして時は止まりぬ
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