Utakata
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彩雲2
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しがみつく執着あはれ蟬の殻 空(くう)の重さに身を震はせて
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銀河濃し小瓶に眠る星の砂 波の音さえ閉じ込めしまま
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徒に過ぎく刻の虚しさに ひとり見上ぐる秋の夜の月
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「遅くない」齢七十みそさざゐ 地図なき空へ羽を広げて
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波しぶき浴びて咆哮(ほうこう)ゴジラ岩 珠洲の岬に立ちて崩れず
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火渡りの読経の響き野路の秋 素足に熱き平穏を乞ふ
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音もなくヒラリと舞ひし落し文 文字なき文字に隠すさよなら
3
陽炎をタップダンスの靴で踏みタタタと響く夏のプリズム
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そよ風が水面の月の影砕き きらめく波紋銀のさざ波
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星流るまた一つ消す住所録 君の残せし文字をなぞりて
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ハグ出来ぬ哀しみ抱き秋薊 夕日のなかに影のみ重ね
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溽暑とふ風死す午後の音頭瀬戸に 低き汽笛の重く響けり
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海鳴りは地球の鼓動ごめ渡る 白き翼が波を蹴り立ち
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葭すだれ揺れる京都の二寧坂 だらりの帯も闇へ消へゆく
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口つく゜む出自明かさぬ鬼浅利 闇の深さに殻を閉ざして
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来歴は語らぬおんな吾亦紅 秘めしくれなゐ命燃やして
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墓洗ふ眠るは企業戦士たち 熱き背中を思ひ起こして
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不整脈抱へて生きる雲の峰 中に刃のいかづちも秘め
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会者定離風となりゆく秋遍路 残す足跡風が消しゆく
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盥(たらい)船一入(ひとしお)あかき佐渡夕焼け 波の彼方に浮かぶ島影
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母ごころひそかに疼く秋鴉 巣立ちしあとの夕闇の濃し
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ひみつ基地失せしふるさと遠蛙 友もの消息風が届けし
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借景は丸窓覗く月の貌 夜更くるごとに傾く光(かげ)よ
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はんなりと涼しき眸(ひとみ)花桔梗 浴衣の襟に風の吹き抜く
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鈴虫の潜む聴力検査室 鳴らぬボタンを握りしめをり
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歳月や人待ち顔の知らんふり グラスの氷溶けてゆくだけ
5
鴨渡る空の彩雲ひき連れて 時を超へたる絵巻のごとし
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鶺鴒が渚に残す表意文字 尾をふりながら読み解くがごと
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あぢさゐや青の時代のピカソ展 生きる痛みを青に混ぜつつ
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カンヴァスの中のコスモス風を恋ひ 筆の跡にぞ今も揺れつつ
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