蟇田いちを
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弱き者叩くはさらに弱き者 おそらく今が日本の夕暮れ
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人の死に乗じて叫ぶものありて 祈りのしじま消える八月
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手間かかる冷やし中華は一瞬で喰い終わるなり人生に似て
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工場に迷うて来たる黒猫は総務課長の苗字(く ろ だ)で呼ばれ
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側杖(そばづえ)をかわす構えの無きにして 唱える理想の虚(うつろ)なるかな
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堪(た)え難し癇走(かんばし)る声なお高く 魂鎮(たましず)むべきこの八月に
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ドア横に立ちて譲らぬ木偶(でく)の眼は 髄抜かれたる根管(こんかん)の闇
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飛び込まん羽虫(はむし)のひとつ篝火(かがりび)に 灼(や)かれつつみるイカロスの夢
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デフレ去り往復ビンタのインフレで使わぬ金の更に減りたる
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満身にデフレの毒の回りたる 使わぬ金は増えることなく
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災難に耐えて花実が咲くものか 家に縛られ斃(たお)れるなかれ
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枝分かれ2のべき乗(2 ^ n)の可能性くぐり抜けたる今日の凡庸
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花びらを裂きて額に貼りつける立葵(たちあおい)なり鶏頭(けいとう)ではなく
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湯に浸かる。デジャヴ(既視感)覚えし垂乳根の胎(はら)を借りたる最後の朝の
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遺(のこ)されし子らはその手を床に延べ 母の温度をかき集めたる
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東国も雲の歩みの疾(と)くなりぬ いるか(dolphin)に乗りて颶風(ぐふう)きたれり
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項垂(うなだ)れて膝の間に過去を追う 西陽に灼(や)かれ雲梯の陰
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抽象と具象の満つる壺ありて 掬い上げんと言葉まさぐる
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糾(あざな)われ縄となるべき禍と福の とけて久しく禍に偏りて
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咲かぬまま蕾(つぼみ)にわかに手折られり その手は神のものであるべし
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窓下ろす CHANELの残り香聞こえ来て 銀座二丁目午前四時半
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大暑なり かえりみられず太る柿 日を照り返す葉にいだかれて
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流れ来る 嘘で編まれし花筏(はないかだ) ただ流れゆく ソーシャルメディア
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ビール瓶 玉なす露を身にまといマウンドに立つ球児の赤銅(しゃくどう)
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燻(くすぶ)りし薪より落ちる灰汁(あく)ありて 絞り出したるうたの苦さか
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猫どもの訪(おとない)来たる かわいいはかわいそうと紙一重なり
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古巣にて椅子買い換えんと母五脚 父は二脚で充分といい
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朝まだき 過ぎたる酒の香(か)に集(すだ)く 蚊の鳴く声の太々(ふてぶて)しさよ
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上洛す 茶を勧められ礼を言い いけずも識らぬ我 東人(あずまびと)
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デイケアで喧嘩取り成し撲(う)たれたる義父(ちち)の遺伝子担(にな)いし妻は
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