蟇田いちを
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猛暑ありのちに台風襲い来て世に歌詠みの種は尽きまじ
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神様のカスハラ指導が結実しコンビニ宅配バスも動かじ
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炎天下 手押し車に日傘無く 冥府魔道を媼は生きる
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あかがねの山 駆け下る瀬戸内に油の如く煮える夕凪
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わかりあうことなどできぬひとたちの 善意の誤解に我は生かされ
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「夏休み終わる」とテレビ騒ぎ立て 北ではすでに始業したるに
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人間の寂しき隙間に入り込み蒸発もする猫は液体
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床(とこ)に伏す妻の口元綻びぬ 園児に卵配る夢を見
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新婚に求めし家電は斃(たお)れ逝き 冷蔵庫のみ銀婚迎え
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羽田への飛行機ゆるく弧を描き 窓開け放ち過ごせる土曜
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睡眠を前借りしてはカネに換え 令和のヒロポン「エスタロンモカ®︎」
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ドトールに前髪直す むすめあり 臨床薬理のノートを拡げ
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四発のプロペラ音を聴きながら残暑を喰うて梨は太りぬ
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善悪の彼岸を跨ぎ易々(やすやす)と無人店舗のオクラは盗られ
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完熟の桃を盗みて鬻(ひさ)ぎおり彼らも生きる 違う宇宙に
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加齢とは終電逃し十キロも軌道のうえを歩かぬこと也
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般若らが子の成績を叱責す 声音冷たきサイゼリヤの午後
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眠られず凝(こご)る記憶は波を打ち 寄せるに重く去るに愛しく
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地上波のニュース番組どれもみな 木鐸(ぼくたく)すてて犬笛を吹き
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遊技屋がヤニふり撒きし駅裏にタワマン建ちて田沼恋しき
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AIの実験場たるUtakataで電気羊は如何に夢見る
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駅前の夕空満たす椋鳥(ムクドリ)のドローンショーに観客はなく
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午前五時 最低気温二十五度 昨日の空気在庫となりて
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夏の宵 濡羽(ぬれば)のドレス﨟(ろう)たけて我を見つめる黒猫ひとり
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年経(ふ)りし庭庭の草荒ぶるに 夜半(よわ)の街路をハクビシン往く
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アグネスが美味しそう!と言ったから 乳鳩(ユーガウ)焼かれ広州の宴
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無花果(いちぢく)の内と外とをはかりかね 蜜の紅色覗かせており
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非難する!最も強い言葉で。と こっそり教えてどんな言葉か
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父親は日々の費(つい)えに敏(さと)くなり 己(おの)が天寿をはかる如くに
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熱量とともに減りたる靴底を磨きつつ見る 日曜の夕
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