蟇田いちを
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みちのくの即身仏ミイラ鎮まる板敷につが椿象カメムシ来世を想い
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時来たる!起て唐土もろこしの農民工 汝ら既に失うものなし(二度目は喜劇として)
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恋愛と依存のあわいを漂うは チェキに投げ銭シャンパンの泡
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ひさびさの法事に集う人々に 我が容貌のプロトタイプ試作品見ゆ
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枝豆を求めて列なす人々よ 食い意地深き我もそのすえ
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砂浜で二人の姪はそれぞれに 陽は海坂うなさかを染めて沈まん
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きょうだいの帰省の時期は重ならず 親の張り切り知るなればこそ
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老親は草花の鉢移したり 帰省の車ここに停めよと
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八月のビラを配りし老闘士 郷愁ありやロシアたださず
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精算に並ぶカートの連なりは帰省を待てるいなかの八月
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ともだちは家族で帰省すると言う放置子 きみが帰るは何処いずこ
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八月の取るに足らぬ日 台風の気配が猫の神経なで行く
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回想はガラケー並みの解像度 思い出補正はAIを超え
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開眼す 意識清明発語あり第九病日独歩退院
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ひかがみは薄明写し きざはしを踏む靴音の軽きにたじろぐ
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夜にむ 短き裾で始発待つ むすめの夏はく過ぎゆかん
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肉を焼くけむに巻かれし甲虫を放生ほうじょうするは先祖と思い
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見初みそめられとついできたというおうな 串を焼き継ぎタワマンに住む
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乳児らのくるま押しゆく保育士の知るか知らずか拝一刀おがみいっとう
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西の陽に蒸されて籠る草の息 宵の西瓜を抱いて歩まん
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AIのもろさ憂える人類よ なんじるや神の悩みを
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弱き者叩くはさらに弱き者 おそらく今が日本の夕暮れ
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人の死に乗じて叫ぶものありて 祈りのしじま消える八月
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手間かかる冷やし中華は一瞬で喰い終わるなり人生に似て
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工場に迷うて来たる黒猫は総務課長の苗字く ろ だで呼ばれ
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側杖そばづえをかわす構えの無きにして 唱える理想のうつろなるかな
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え難し癇走かんばしる声なお高く 魂鎮たましずむべきこの八月に
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ドア横に立ちて譲らぬ木偶でくの眼は 髄抜かれたる根管こんかんの闇
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飛び込まん羽虫はむしのひとつ篝火かがりびに かれつつみるイカロスの夢
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デフレ去り往復ビンタのインフレで使わぬ金の更に減りたる
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