晶史
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泣くことも笑うこともやめ見上げれば浮かんだ月がちょっとにじんだ
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清水のライトアップの光線は京都の街のヤコブのはしご
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あの頃はあのようにして笑ってた夕方六時の母校の校門
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ペコちゃんと三本仕立ての菊の花そしてもみじの初デートの日
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あの二人初恋同士だったのに そして別れたはずなのに
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晩秋に夕顔のタネ摘み取りぬ愛する人の骨拾うごと
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今月の十六日はペコちゃんの前で待ってた初デートの日
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久しぶり元気でしたかの挨拶をさえぎるリュックのヘルプマークが
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あの頃と同じ季節にこのベンチ座れば聞こえるtoo far away
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何もかもうまくいかないこんな日がこの歳になってやってくるとは
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召し近し彼女はかつて恋をして泣いて笑って子を育てたり
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原坊に似ているなどと言われてたあいつは今頃何してるやら
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若くして逝きし彼女の笑顔あり 今朝は母校の文化祭の日
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来し方を見れば一緒に歩み来た 口笛吹きと吟遊詩人
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とぼとぼと背中丸めて帰路につく私のうしろに十六夜の月
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神様は御国にその子を招きしか 幼き命失われたる
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そこここに曼殊沙華の花咲くように京都の街に思い出がある
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人多き綜合病院の待合は 仲睦まじき老夫婦あり
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ながむれば 跳ね返りそうな色をして 塀に並ぶる曼殊沙華咲く
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悠久の御所の歴史に比ぶれば 半世紀ばかりの初恋ベンチ
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悲しみと涙納めにこの秋は横笛のごと滝口寺へ
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萩の花咲き始めたる御社を 訪ねてから行く日曜礼拝
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この秋は滝口入道 二度読んで ひとり訪ねる奥嵯峨の寺
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父逝きぬ おりの母とはおない年 三人の子を育てし妻は
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なにひとつ思い出もなきこの夏の 五山の炎あかあかと消ゆ
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夕焼けに飛行機雲がよっつあり あっちの人生もあったんだなぁ
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送り火が燃えてるような人生で 季節の終わりのしるしをわかる
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この花があって真夏をやり過ごす真夜中に咲く夕顔の白
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あの人と結婚していたらなどということを 思いめぐらす宵山巡り
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この花がなくては夏が越せないと あなたが言った夕顔の白
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