晶史
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このベンチ 公衆電話 初デート 半世紀前の失恋の時
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長旅の途中で何があったのか今年はあそこにつばめが来ない
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子安貝いずこにありやつばくらめ 我が家もひとり姫君がおり
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大空で微分積分解くように飛行機雲が交点つくる
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杉の葉に抱かれた雨輝けり カハラホテルのグラスのように
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卒寿なる母買い物に出かけたり手押し車を自家用車と呼び
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あの店のかごの小鳥は南国の赤い花々知らずに鳴けり
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人などは恐るるに足らずとそのネコは背中を向けて木陰に消える
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風に舞う花びらがあり雨に濡れ寒さに耐える花びらもある
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四十で逝き二十三回の年を重ねて今日誕生日
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あの月が満ちたる後の聖日は四十三回目の受洗記念日
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人々に忘れ去られた悲しみの墓標のように桜は咲きぬ
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無常なることを説きたるみほとけの前でしばらく桜咲きたり
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生きづらいことがこんなに多くって阪急電車はただいま不通
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まぁちゃんがスティディだったあの頃のフォークばっかり歌うカラオケ
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卒業のあとからのことは訊かないで 中島みゆきのカラオケを聞く
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月からも見えてるような校庭のテニスコートにボールがひとつ
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ジャンパーのフードをまぶかにかぶりつつ時雨の中を礼拝に行く
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悔しさと悲しいことが五回ほどうれしいことがたった一回
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人工物なれど美(うま)しきロケットはすっくと立てる種子島の海
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アン・シャーリーが名付けたように私にも「初恋の椅子」と呼ぶベンチあり
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人生を駆け抜けるように地下街で君に出会える朝七時半
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手をつなぎスケートリンクにいるように急いでわたる点滅信号
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園児らの勇ましい声と叫び声響き渡れり豆まきの朝
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鴨川を次の橋まで歩いたら 後悔ばかりのアイビールック
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雪の夜は静かなれどもパトカーと救急車の音遠くにひびく
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信号が赤に変わりそうなことさえも若いふたりは笑いにかえる
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あの頃と名こそ変われど入試とは寒くて湿度の多い空気で
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恋人に贈られしまま色褪せた齋藤史の歌集をひらく
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門柱に子羊の血を塗るように「久松留守」と書いてみようか
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