カミハリコ
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てのひらに浮かべた月が死ぬ前に欠片残さず喰ってしまえよ
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高架下にて強奪した舌と歯だめだね夏は溺れたくなる
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過度に持ち上げるか過度に叩くかしかしない国でふつうに生きたい
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思い出から遠ざかろうとする足に気を付けないと幽霊を踏むよ
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潮騒に似た風音と虫の音は夏を殺めた共犯者たち
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別製のスピログラフで描いてくれ キリキリ歪む僕の心臓
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もう疾うに大人になったくせにまた十七歳の瞳で責める
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灼け付くような暑さでも貴方はすらり立っている(幽霊だもの)
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べったりと空覆う黒剥がすためいつでも爪は尖らせておく
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あの雨にあなたの穴に穿たれて相容れません愛入れません
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さみしさに慣れるのはいいさみしさを与えるのには慣れなくていい
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何でもないように定石を放るその心臓に穴を開けたい
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俯せる君の背を這う雫から『海』というものの味を知る
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粉々に壊れてくれたほうがいい それらもぜんぶ幻覚でしょう?
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名前と左手だけ置いていったどこまでもどこまでも酷いやつ
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海よりも空よりもまばゆい蒼に縋る指先から溶けてゆく
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こんなにも降り注ぐ雨の中ならいちばんの嘘をつけるだろう
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もういちど出会いから繰り返そうか欠けゆく月を目印にして
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指先に灯す赤よりあつい舌 わたしの胸を過ぎる彗星
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路地裏の匂いを思い出す幸運 向こう側にはいつでも行ける
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真っ黒な傘を差そうよ正しさと光しかない世界の中で
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眠るのに時間がかかるこんな日はちいさい靴の足音がする
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止まり木をひとつ失くしたくらいでこんなに指が震えてしまう
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遺書だって数をこなせば鼻歌を歌いながらでも書き上げられる
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臆病なきみが残したこの傷が治らないよう手当てはしない
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この足で歩んだ果てにあるものが十三階段だったとしても
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足裏に触れるアスファルトの温度 ようやく訪れる夏の終わり
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あたらしい道を選んで繋ぐ手でキリトリ線は見えなくなった
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夏尽きて舌と頭が馬鹿だから海も涙もおんなじ味だ
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寝転んで見上げる君の顎裏にほくろがみっつ夏の三角
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