マンモス
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懐メロと妻子と友と時事ネタと仕事と酒と少しの孤独

わたくしの「今」を共有したくつて旧友ではない友と呑む暮れ
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十日間風呂にはいれず父帰るせめて洗車をしてから迎ふ
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手術後の院内感染父コロナまさかの坂をひとはのぼれり
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「看板は女ばかり」と子が糺すフィリピンクラブ男の楽園
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背にけはい手持ちぶさたの店員と胡蝶蘭たつカウンターひとり
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同じとき同じ映画を観し友がゐたこと知らすラインをひらく
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それぞれの神に手向ける両の手の映画おしへるかぎられた生
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ぜつぼうの光と陰がかさなつて奏で叶へるみらいへのうた
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踵から足をおろしてかげあそび空っ風ふく工場のまへ
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約束の時間にこない客をまつ銀杏がゆれるあをすぎる空
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失言のかたちを借りて本音漏る「そんなことより」「どうかんがえても」
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コンサート予定に入りてあさぼらけ車中にひびく指揮小澤征爾
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従業員出入り口から踊り場のけしき三日目多言語標語
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振込の金額ちがいキャンセルしけふの夕日はやけにまぶしく
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友がみなわれよりえらく見ゆる日の虚実綯い交ぜ啄木のうた
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前職の同期のエース東京へ元の上司は西に追わるる
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真夜中に同期四人の写真受く総年収はおよそ十倍
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アルコール度数は高く高野山般若湯とは酒にはあらず
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祖父と孫の電話おもつたより長くシャドーピッチの影ながくなり
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えり足を自慢げにみせパーキンソン病の母こゑはねをとめ
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専属の美容師母はみつけをり近所のまつげエクステのひと
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二、三枚はがし艶めく白菜はまつすぐに立つ新聞のうへ
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畏友らとおなじ土俵であらまほしただの課長ではない一歩
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祖母の兄うた愛せしと母にきく父の手術の終はりまつ窓
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「過言ではない」を漢字で書ひて見せ十年一日いちじつ父と子で過ぐ
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「たくさんのしあはせもらつた」と死亡欄しあはせのかぞへかたをおもふ
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手つだへば坐つて尿ゆまりする吾子の本音も漏れた水音をきく
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とりあえず会社をまはす冬浅しサルサソースのパン齧りゆく
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不忍しのばずはちす立ち枯れまた咲きぬパンダはとわにこの国に来ず
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かかえこみひとりで悩み納得し明日入院の父のきんろう
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