石川グルーチョ
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投稿数
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なぜ誰も見ることのない報告書書かねばならぬ重くなるペン
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少年期ピアノを弾いてた事もある今では労働しおれたわが指
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献立の裏紙に書いた短歌にも魂宿る書き続ければ
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カタカナで書かれた自分のフルネーム他人の名のような違和感がある
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すね毛にもひとつひとつのドラマありちぢれていたりへたりこんだり
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一人きりエレベーターで降りる時つかの間孤独何もしゃべらず
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だれそれがうんぬんかんぬん言ってたよなんちゃらかんちゃらもう聞き飽きた
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人生は更新されるよ死ぬまではそのことをまだ嬉しく思う
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ありふれた言葉が今日はいままでと違ってひびく年をとること
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踏みしめる砂の熱さに耐えかねてステップを踏む無様なダンス
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錆びついた南部鉄器はもう家族毎朝火にかけ妻が飲む白湯
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子供らが砂の即席ダム工事水つかさどる幼き神の手
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海水浴その代償の赤い足ヒリヒリとする脛をさするか
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うきわ浮くこどものいのち抱きとめて波にゆられてただよっている
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つかれはて酒を飲むことそれだけが生きがいとなる人生もある
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冗談を真に受けるなという君の過去の冗談笑ったこと無し
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まだ先の予定立てるの好きな妻 それまで生きねば誓いし夫だ
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人見知り我は未だに人の目を見つめるときの小さな覚悟
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生きているいいわけをまた考える本当はただ生きていたいが
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スーラータンメンでやけどの舌の上転がっているチョコミントアイス
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走り方意外とかわいいおじさんが走り去ってく夏の夕暮れ
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俺の指スマホをいじるためだけの道具と化した令和七年
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いつのまにビールはすべてなくなった愕然とする俺と友だち
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ぬくもりが消えた光よLEDそのまぶしさにもいつか慣れるか
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夕飯後包丁洗う最中に殺意芽生える人もありけり
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絞首刑登る罪人の足どり我は登るか体重計に
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誰しもが自分と同じ醜さを持っているはず信じたい午後
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うなづきも首を横にも振ることなくただじっと見る目玉が欲しい
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つかれはて登る階段ふくらはぎ重々しくて遠き寝室
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目覚ましをかけることとは未来への希望を託す一つの儀式
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