カミハリコ
0
55
投稿数
1320
心臓がひとつでは足りないのなら明日からこれも使ってください
8
安売りするななんて言うくらいならあの時喰ってくれればよかった
7
抜けた歯は何の役にも立たなくて飴玉代わりに転がす程度
5
あの頃のよろこびもかなしみも全部詰め込んでいた空っぽの部屋
11
一回も引かれなかった言葉たちだけで作ったまぼろしの辞書
14
実用化されたらきっと買うだろう不思議の国のアリスのキノコ
5
わたし貧血気味だから赤よりもロゼ寄りなのかと思いますけど
7
ミステリーサークルって老人のサークル活動だったらしいね
7
「大豆に目玉があったら怖いよね」滑らかに押すミキサースイッチ
9
だんだんとちいさくなっていく僕のつむじをずっとそこから見ていて
6
冷蔵庫の隣でしか眠れないたぶん夢まで落ちて行けない
8
孵らない卵を抱く冷蔵庫開け閉めしては悪夢零れる
6
助けてと叫んだ夜にあくびしたあれから君が僕の神さま
8
ひとりごとふたりごとまでなら許す さんにんごとならあっちでやって
8
傷ついたレコード盤をなぞる針みたいにおなじ愛をささやく
10
途切れそうな鼓動に耳をすませる涙よりはやく夜が零れる
8
なぞればなぞるほど遠くなる君と隣合ってたあれがはじまり
8
こわいならこわいものになればいいおしえてくれたあのひとは、いま
5
密室に横たわる安眠知らずの男の涙は不透明
8
夕焼けがこんなにひどい色なのに部屋はふかく藍色に沈む
9
何度刺されても塞がる血管や皮膚みたいには生きられなくて
5
ひとりよりふたりの方がさみしいと感じるわたしはこちら側です
10
齧らずに丸飲みしてくれるきみの前世は多分やさしいピラニア
11
大切な中身を守る棘なのに邪魔者扱いされる不条理
9
それぞれの地獄におちる僕たちを見守っている曼珠沙華たち
7
あのひとの煙草の匂い覚えてるのは返せなかった文庫本
6
何回教えても覚えなかったあの花の名前 そう百日紅
6
まっしろい姿で油断を誘いつつ口中やけどさせるサディスト
7
なにもかもひっくり返る日々だからいつか見たいね月の裏側
9
体温を押し付けるだけの抱擁に幽霊ゆらゆらゆらゆれる
7