Utakata
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文月のペンタトニック
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この夏のネイルの色は葉緑素 きみのひかりと二酸化炭素
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校庭のホームベースを撫でる影きっと誰かの夢のなきがら
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太陽を忘れるために食む夜は甘いですかと三日月に問う
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駅前に建つ新築のマンションは解体されるときを夢見て
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ひび割れて景色をふたつ映す窓 きみの子づくり摸擬戦に飽く
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タンポポの綿毛が飛んで行く方に向かう 背中に追い風を受け
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二万度を超えるスピカの熱量を胸に成人式の振袖
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照明のセンサーからも無視されて「ぼくはいるよ」と呟いてみる
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背伸びして買ったヒールの高い靴 ため息ぽとりデートへ向かう
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いちじくの花は果肉の内にあり 目立たぬ色のルージュを選ぶ
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休日の唯一の会話 洗濯機「きれいにしますね」俺「まかせたぞ」
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自転車に乗れた逆上がりができた 日々を紡いで祝日を編む
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怒鳴る客 雑誌読んでた室長が出番ですかと熊のうごきで
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目ざめたらヘアーサロンの予約してあなた嫌いなわたしになるね
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贖罪に足らぬ命を悔やみつつ十三段目を踏み顔を上ぐ
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糖質を制限すると決めた日に期間限定のアイスと出会う
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上司には「はいそうです」と頷いてつまむ
海鼠
(
なまこ
)
に歯ごたえのあり
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冷ややかな月の視線をやりすごす 他人と肌を重ねてもひとり
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停留所のベンチにぽつり死んだセミ 命の意味を求めすぎない
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競馬場でたまたま隣にいた獏に教えてもらう夢の味とか
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世の中が思い通りにいくわけない ラー油多めで頬張る餃子
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八つある海なし県に数えられ俺は違うと言いたげな滋賀
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真っ白なパンダがいたと思い出す 意見が孤立した会議にて
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納豆を混ぜる 一粒ひとつぶを剥がし孤独を教えてあげる
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ああ別に独りで生きていいのかと気づいた刹那、はじまる世界
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管理簿を受けとるときに指がふれ何もはじまらない金曜日
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まどろみのなか人間に戻りゆく きみの副流煙に抱かれて
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諦めと割りきりだけがうまくなり舌で転がす梅干しの種
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寂しくはないけどチキンラーメンの卵は上手く割れないままだ
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文月の宵が奏でし風鈴はペンタトニックスケヱルで鳴る
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