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煉獄

何気ない会話の意味が分かりだす次から次に全て分かりだす
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漠然とした恐怖に身を竦ませる具体でも抽象でもないもの
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三時までに眠れれば俺は合格だいったい誰にマルをもらうのか
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「それからの代助と同じ苦しみです」そう言ったとて誰に分かるか
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白秋の言葉の巧さに見惚れるが気恥ずかしくなる巧さでもある
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ふた粒を飲みさえすれば眠れるが明日が怖くて先延ばしにする
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口は災いの元だとあと何度眠る前に逡巡するだろう
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毛が生えることを願ってる人がいて脱毛サロンに行く俺がいる
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にゃんにゃんにゃん猫の鳴き声を真似ている俺を見て見ぬふりするお前
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脇の下で温められた水を飲む 初めて救急車に乗りました
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絞首刑に連行される人を思う眠りに落ちる前の一刻
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ハッカという名前が既に涼しいね 浴びるとほのかに痛む水塊
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ミョウバンを水に溶かして浴びている 何してるんだと言いたくもなる
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千日前、自分は今と変わらずに辞めたがってた 辞めてしまえよ
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腹立たしいメールに返事を書いている輪廻の果てまであとどのくらい?
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何も悪いことはしてないなのになぜ薬を飲まねば眠れないのか
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ラムネではない白い粒が袋詰めにされて金とそれを取り替える
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一年ぶりに昼食を食べている特に感慨もなく食べ終える
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ハローワークに電話するハローワークの受付の人が優しい
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半分は夢もう半分は? 太陽を直接見れば欠けてゆく視界
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何遍も目覚めて時計を確かめる 五分に一度は時計を見ている
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月の裏に行ってみたいとは思わない死にたいと死ぬこととは別だ
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朝五時に早期覚醒する朝の、もう既に憂鬱に満ちる脳
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燃えさかる炎の中に飛び込んで消えていく自分をただ見ている
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お釈迦さまの入滅ポーズで横になる 彼の人も悩んだりしたろうか
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明日の地獄までの猶予が三十分 せいぜい有意義に過ごします
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苦しみを吐き出す歌ばっかりだなと苦笑いも出ず遠い目をする
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降り積もる憂いのあまりの大きさに僅かに三時間しか眠れず
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何もかも解決しないままお薬を飲んで終わりになる日曜日
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明け方の鳥の鳴き声に憂鬱を呼び起こされて鳥は無実だ
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