通気口
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成人。架空短歌。お引越し完了しました。

春に死ねないまま年を重ねゆく私の雨に笑う木蓮
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早足の春に木蓮 こぼれ落つ皓歯の無垢に雨のくちづけ
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狂い咲くさくらよさくら骨片を散らせ弔え如月の死を
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干からびてなお烏瓜 昔日の夕焼け色の恋がしたたる
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わたあめの色した雲が満月を真綿のようにゆるり殺した
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暗室の赤い光のなかにある私はけもの むさぼるけもの
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散り落ちる椿一輪 一輪の恋に堕ちたか 恋が墜ちたか
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てのひらに落ちれば消える雪だから僕らは距離を零にできない
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主なき庭にかそけき寒桜 生きるも逝くもひとりの一夜
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鶏頭けいとうの赤を抱いたのかしら その胸に瞳に燃える炎は
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初春を握るつぼみのくれないほころべ 君にくちづけをする
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午後三時 あなたに会える夜までは眠らせておく紙色の月
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打ち付けた棺の裏に降り積もる白は桜か四月の雪か
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かさぶたを剥いで曇天 咲き誇る花には花の地獄があるわ
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祈りなどしらけてしまった乙女らがつまむ苺の雫したたり
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吐き出した息に溺れるごとく冬
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息止めた桜 冷蔵庫の中はおまえのための赤い夕暮れ
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盗まれた唇はらはら降り落ちる薄紅色の証を残し
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太陽の下ではあまねくうららかに染井吉野の白に似た骨
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花冷えにつぼみ祈りのかたちして生き急ぐためのきみの心音
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共寝する冬の骸の薄膜は朧の月の手触りに似て
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冬に添う最後の夜だ 雪色のままに散り落つ牡丹を看取る
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望んではいけない恋だ 師走の夜 月下桜の狂い咲く程
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ゆるゆるとわたしをほどくバスクリン 湯舟はきみと同じ温度だ
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ハンガーのかわりの向いの椅子の背に君のかわりに座るパーカー
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生垣の制服のみたいな白のなかぼくら二輪の赤い山茶花
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狂い咲く琉球朝顔手をのばし神無き鳥居に夕闇穿つ
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実を開き赤裸々みだらなあけびの香 赤い口紅塗りたしてから
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サバトラの子猫寝転ぶ屋根の上 鰯の雲の海に抱かれて
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くろぐろと長き尾 老猫あの夏に喰ったあげはの飛び立つまでは
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