医師脳(いしあたま)
6
9
投稿数
522

 半世紀以上も昔のこと。
 青森高校で古文を習わされた。教師の名は忘れたが、脂ぎったオジサン顔と渾名だけは覚えている。
〇「無駄だよ」と十七のころ厭ひたる古文の教師の渾名は「ばふん」
 そんな生意気盛りが古希をすぎてから短歌を詠もうとは……。
「一日一首」と詠み続け、気づけば(内容はともかく)数だけは千首を超えた。
 いわゆる「白い巨塔」で生息していた頃の習慣だろうか。
 自作の短歌に『しちじふのてならひ』と名付け、医師脳(いしあたま)を号した。
〇七十歳の手習ひなるや歌の道つづけてかならず辞世を詠まむ
〇満帆に〈老い風〉うけて「宜候」と老い真盛り活躍盛り
〇うれしきは毎朝いるる珈琲に「おいしいね」と言ひて妻が笑むとき
〇生き甲斐が働き甲斐なる生活に「老い甲斐あり」とふ痩せ我慢もなす
〇「先生」と呼ばれ続けて半世紀いまや符牒のやうなものなり
〇「日々一首」と詠み続けたし一万首。吾も百寿の歌詠みとならむ
〇人生の川にも澪木(みをき)を立つるごと刻舟とならざる一日一首を
〇老いはてて彼も汝も誰か薄れ去りいずれ消ゆらし吾の誰かさへ

ふたとせ経し旧機のOS替へてやり「まだいけるぞ」と喜寿なる我は
6
パソコンのOS替へつつ思ふなりこの機械にも心はあると
9
パソコンは日本語環境取り去れば「I feel better」と叫ぶやもしれぬ
7
CELERONとATOMにQ4OSを積むをながむる「秒」の遅さよ
6
若き医師と昼の話題はリナックス。パソコン蘇生をつひ自慢せり
6
二十年ふたとせへし32bitマシンさへQ4OSで蘇りけり
5
ボケよけにと妻のはじめし数独は超難関で我は手が出ず
11
「七日間も日記をつけわすれた!」と言ふ妻に天気を教へつつ不安もわきぬ
13
屋根の雪溶かす日差のありがたし今「大寒」の候なればなほ
10
家にあるパソコン三台を同期させいづこでも詠めるも秀歌あれがたし
7
小寒につもりし大雪を大寒の日差のあとの雨が溶かすも
9
豪雪に出勤できぬ老医われを出迎へにし職員の笑顔
9
十日ぶりに襲ひし大雪と七日ぶりの出勤かさなる不運を嘆く
8
過去最高126センチもの大雪なり。除雪機で手伝ひたまふ隣人ありがたし
9
思いがけぬ旧友よりのメイルにて「明鏡に載らぬが…」と生存確認
8
大雪の予報を聞きて吾が妻はひび入りし雪ベラをなでつつ「がんばれ!」
9
冬の陽を背に受け目覚む。机上なるモニターに医師脳いしあたまの文字、思はず苦笑
5
パソコンの評価はメモリとCPU。老医わが自負は経験と情
8
医師脳とふ我が筆名だけ出るモニターで三十一文字みそひともじのあそびをすなり
10
アイコンをワンクリック!で立ち上がる縦書き画面に一首も浮かばず
7
デコボコで擦れ違ひがたき雪道にメーターだけ進む出勤タクシー
9
WIN11の脆弱性を知りてより手元のPCは皆ZORIN化せり
6
ZORINとWIN11を詰め込みしミニPCは机上に鎮座す
5
小寒の束の間の陽に冠雪のドサリと落つるやいとこぎみよき
9
OSをZORINに替へしパソコンに「同行二人」と語りかけをり
7
見てみたい! クロムブックで育ちたる小学生の作る近未来
8
ENTER!でClamAVスキャン中・・・ながるる白文字が睡魔を誘ふ
6
老残機の日本語環境ととのへて令和七年も縦書きで詠む
11
元旦の雪をかづきて津軽の木は朝陽にかがやき春を恋ひをり
9
新しき五年日記にペンを執り八十一歳はちじふいちの己をおもふ
12