ういろう
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はじめまして。誰に書くともない日記のようなものです。どうぞご笑覧下さい。

たそがれにあなたと話す一〇分がずっとずっと続けば良いのに
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君に話す何気ないこと探すため川原の道を遠回りする
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山道に金木犀の香りありこの谷間にも人の住みけむ
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なんにもない田舎と言われたこの土地も誰かの故郷かえりたい場所
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あまりにも秋が急いで過ぎるから紅葉もみじ銀杏いちょうも戸惑っている
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父母ちちははでつはぐくむこの身体からだいでや捧げむ世の人のため/骨髄バンク登録
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この先はきっと苦しい道のりと分かっていても目指したい空
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コンクリの床に果てたるカメムシはいずこの土にや還らむとする
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思いがけず君とおしゃべりできたから何でもいいや今日は良い日だ
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「お祈り」のメール見るたび人事部の寺社での祈祷きとうを夢想し笑う
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いかほどの名月見ても浮かぶのはれたれたの月並みの恋
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栗色の髪をなびかせ行く人に君を想いてぢっと見送る
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真夜中の高き月をば仰ぎ見て善き人として死にたしと思ふ
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秋来ぬと目にもさやかに見える頃もうすぐ故郷は鮭に沸く頃
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産院の扉くぐって来た子らが焼き場の重いドアから帰る
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眠るのが怖いようなこんな夜に親の車で聞いた曲聞く
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案山子かかしかな 目が悪いから分かんない あっ、今動いたよ やっぱり人だ
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蜻蛉とんぼさへ片方かたえに連れのあるものを我が身一人の秋ぞ悲しき
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明日あすこそはあしたこそはと言い聞かせ怠惰なる身をベッドに沈む
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文具屋の腰の高さの試し書き「ママだいすき」と幸せの跡
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一年に三度の帰省の明ける日の我を送りて金魚は絶えぬ
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一六年育てし金魚は旅立ちぬ 我家を発つ日の夜のこと
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浅草の天丼アタマは流石さすがだが米は負けぬと田舎の我ら
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ぴかぴかのとちの実見つけ伸びる手を「大人だから」と引っ込めて居る
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信濃路しなのぢの祖母は天婦羅てんぷら揚げるらむエアコン無きに腰を曲げつつ
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盆だから線香あがない部屋に焚く独りの下宿は仏間もあらねど
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幼子おさなごの親にれじと結ぶ手は吾子あこにあらねどいとしきものなり
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大風おおかぜと打ち付ける雨ものかはと百合よ咲きぬけ二日の命ぞ/タカサゴユリ
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家を出て初めて気づく包丁の青菜あおなきざむ音の温もり
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原爆忌 晴天のもと ビル街に この地に絶えた 人々を思う
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