Utakata
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愚息
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定型の社会を逸れた
誰か
(
わたし
)
にも短歌はそっと寄り添っている
14
「生きているだけでいい」って言う人が詐欺の容疑で起訴された朝
7
人間が踏み荒らしたる地の四葉 身勝手で無責任な「幸運」
10
「NO」と言えないわたし見て首を振りながら
嘲笑
(
わら
)
っている扇風機
8
交番の巣から飛び立つ燕あり都内の交通事故死者は無し
6
通販の到着日時を指定するとりあえず三日間の延命
3
OD
もリストカットも世間での「自分らしさ」の輪には入れず
7
飛び降りを防止するため国民に翼が配布される日曜
6
深夜でも律儀に信号守る君 夜が明けるまであと三歩半
8
バーコード読み取る機械にリスカ痕かざしてみれば「価値なし」とだけ
5
集合体恐怖症ゆえ人間の集まりである社会も苦手
7
あの人がくれた言葉は分別の種類不明で捨てられずいる
11
魂を悪魔に売れば21グラム痩せられるという噂
5
窓越しに通勤電車眺めをりみんな違って私だけダメ
7
珈琲の風味をマスクで閉じ込めて「家に着くまでが喫茶店です」
9
テラスにてクリームソーダ飲み干せばフライングした夏を見つける
8
味のないガムを噛み続けるように惰性で生きる深夜二時半
5
傘を捨てびしょ濡れだけどお咎めなし今日から私一人の暮らし
9
幽霊はあっさりすり抜けられるから試練を壁と言わないらしい
23
ルーブルの名画にペンキをぶちまけるような気持ちで初夏のゴミ出し
4
『終わりなき旅』を聴いても響かない心寂しや終わり泣きたひ
4
散らばった花片を想い下を見るそんな花見があったっていい
4
アオハルを謳歌する花風に舞い今年も世間の顰蹙を買う
3
Suicaには500円ずつチャージする思い立ったら死ねるようにと
5
無機質な機械の声に救われるまだ世界には愛が足りない
2
ミス一つするたび残機が一つ減る 今日は三回自殺しました
2
美しく気高い月が怖くってビルの隙間に慌てて逃げ込む
4
切れかけた蛍光灯が瞬いてSOSを打ち続けてる
4
手が滑る買ったばかりの本が落ちる 罰当たりだな罰当たりだな
0
二十歳
(
はたち
)
まで生きてしまった慣性で今日も死にたい夜を迎える
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