無兎    フォロー 11 フォロワー 16 投稿数 98

気ままに詠みます。

迷ひきて見上ぐる門は緑蔭に銀の海への道開きをり 

巻き戻す時の女神の悪戯の夜に残りし玻璃の靴かな 

巻き戻るいつもの朝の雑踏のみな独りゆく靴音の波 

巻き戻るいつもの朝の食卓の玻璃の器のシリアルの音 

滑り込む山の手線が連れてくる風の子ひとり 僕らもひとり 

愛しみて撫づ人の手の思ひでを白く纏ふる干し柿を食む 

掌の上でさ迷ふ僕たちを青く灯した地図アプリ、冬 

慎みの小さな星を飾りをり待降節の石蕗つわぶきゆかし 

飴色に光るタワーを蕊として咲くこの街もうつろひの中 

背あわせに二本立ちたる銀杏樹の抱かんとする秋こぼれをり 

庭すみで鴇色に咲く蓼の穂はたおやかなりし君の標べか 

男の子女の子などいふ前の子らの野原に揺れし蓼の穂 

あかまんま母さん役は姉になり手をひき帰る夕暮れの道 

みちよちゃんとまだ言へなくてみとたんと呼んでついてく蓼咲く野はら 

蓼の穂は細く別れた茎先に淡き幸あり秋は満ちゆく 

イヤフォンを分けあって聴く少女らの笑顔のやうに揺れる蓼の穂 

反射するビルの光の重層に薄れる影は街のあやかし 

木犀のかをる街では木犀の香を知らぬ人ゐるを知らぬと 

自販機の足元で鳴く蟋蟀こほろぎはただ蟋蟀の生死を歩む 

感覚と感情の緒をこの箱に繋いで描くボクの王国 

錆びて朽ち崩れて塵に戻れたらヒトのタトゥーは消えるでしょうか 

役割を解かれた朝は慰めに「準備中」って嘘を貼られて 

詰められて吐き出していたあの頃は二十四時間輝いていた 

冷たくも熱くもなくてゴメンねとコトンと出した缶の珈琲 

まだ君は繋がる場所を探してる星がこんなに輝く夜に 

草原で膝を抱えた自販機と空から降りてくるものを待つ 

つめたいの青いボタンを光らせて人待つ夜の自販機と猫 

三度目の火星探査を切り上げて渋々はさむ カフェのレシート 

空をゆく鯨の腹は悠々と朝の五分を見おろして行く 

増してゆく紫式部の実の色に小さな花のころ思ふ朝