もみのき
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約束の重み潰(つい)える昼下がり代わりになにを差し上げましょう
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ぬかづいた土の冷たさひいやりと今も疼きぬあの日の決別
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わたしは貝になりたい螺子になりたい胡瓜になりたいできればあなたの知らぬわたしに
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グレープフルーツの果肉しゃきりと凍らせて半透明の黄色をかりり
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しらじらと明ける晩夏の夜のしらべかそけく流れ流れて空へ
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唾はくごとく歌詠むと吐き捨てし青年歌人もはや一〇〇を超え
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知らん顔して立ち止まるあなたのかたわらにかすみゆく晩夏
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かすみゆく紫紺のベールふりみだし愛撫を乞うきみとろりとろける
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夕闇にゆらめく春のむらさきのかすむ吐息を仄めかしてキス
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ねむれずの森はなざかりの森かえらずの森にいざ往かんありったけの盛り髪ふりみだし往かん
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泣いた赤鬼と友達になる計画きみに近づくないしょの計画
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にぼしが好きとはしゃぐきみとふたりで小川さらさらひなたゆらゆら
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なし崩し乱れるがまま駄目押しにあがけあがけと愛でられる君
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粛々と街灯の点く夜の道行きにはあまりに眩しあまりに苦し
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噛み切れぬ真心こめたせいくらべ今は並べど抜きつ抜かれつ
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きりきりと礼儀正しく居直りぬごまかしてしまえとぼけてしまえ
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後悔に傷む心のしおらしさ手練のかげに咲く縷紅草
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世迷言とごまかすしぐさ慕わしくたまらず握るいじらしき指
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血迷った彼の身体にいま触れるまだ見ぬ地獄すえは諸共
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吐息洩れろうそくの火の気配さえそぞろにゆれてうっとりと消ゆ
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息をつめまずは眼を閉じ黙りこむ計算された白昼夢のごと
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レモンでは偽りきれぬ少年の嘘を味わうすましたくちびる
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かつて観た映画にも似るさよならの生々しい声いとわしき夢
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あまりにも意地が悪いと叫ぶわれ泣いてはおれぬ生きてもおれぬ
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まなざしの洩らすせつない理知の色たのみとするはいとけなき情
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くちなしの罠の香りにえずく午後たまには欲しい愛しさの代(しろ)
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「嫌われた」澄ました顔でしゃあしゃあと巧みにかわす今はこれまで
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涙雨かすかに残る瀬のあとに垂れて流れて行くさきはなし
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この腕にロマンチストを縛りつけただ抱きしめるいまわのきわさえ
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黙りこむ彼にむかって礼をいう高のしれたる言いわけのかず
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