冥夜の猫
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風薫る散歩道ゆく車椅子 祖母の手触れし紫の花
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今は亡き歌人の詠んだ透明な凪の世界に心あずけて
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鳥籠の鳥にはなれぬ 青天にそぞろ蠢めくこの旅心
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独り生く この寂寥を手放して 心開いて生きてみようか
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軽やかに春から夏へ渡りゆく花の女神の足跡そくせきを追う
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闇雲を貫き光る満月に遠く平和の祈り捧げて
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柔らかく萌ゆる若葉の切れ間より望む湖上に小舟きらめく
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尾根道に初夏の風巻き上がり 我が気鬱ごと吹き散らしゆく
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地図もない自分探しの流離たびの果て ようやく僕はここを見つけた
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小夜ふけて歌集をめくる指を止め 手編みの薔薇の栞を挟む
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ゆったりとかいな広げる大銀杏 葉擦れの音に心澄みゆく
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裏山の険しきみちのその先で 天にそびゆる大樹と出会う
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炎上のツイ見て学ぶ疎外論 人は理解の中で生きてる
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得意気に指摘したのに勘違い 慌てふためき火消しに奔る
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夜色のビー玉つまみ灯にかざす 心映して揺れる天河
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初夏はつなつの風に誘われ見上げれば 真白の小花 甘く枝垂しだれて
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ヤッホーと街に木霊す昼下がり 幼子達は何して遊ぶ
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輪郭も眉も額の黒子ほくろまで 他人の空似 心乱れて
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焼け落ちた瓦礫の街に星降りて 平和の国はあまりに遠く
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星々の紡ぐ運命さだめの物語 読み解けぬまま流されている
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見送りて 後に我が身にふつふつと湧き上がりくる透明な意志
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光にも闇にも変わるこの道を 小さな愛を灯して歩く
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諦めに似た味がする珈琲と 紺青に浮く明けの三日月
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里山に山吹の花燦々と 女神に捧ぐ太陽のかん
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両の手に掬えるだけの幸せじゃ満たしきれない時代の渇き 
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情報に囚われ言葉見失う 愛なき世界紡ぐのは誰
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陽だまりの屋根奪われた猫達が今日も立ち寄り宙を見つめる
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飛んで火に入る珈琲と聞こえたり 確かに豆は跳んで火に煎る
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分け入れば 馬酔木あせび 山吹 山菫 媚びぬ命の春を寿ことほ
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僕たちは夜空そら宇宙そらとの境い目で 背中合わせの星を見ていた
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