Utakata
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冥夜の猫
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風薫る散歩道ゆく車椅子 祖母の手触れし紫の花
10
今は亡き歌人の詠んだ透明な凪の世界に心あずけて
10
鳥籠の鳥にはなれぬ 青天にそぞろ蠢めくこの旅心
6
独り生く この寂寥を手放して 心開いて生きてみようか
10
軽やかに春から夏へ渡りゆく花の女神の
足跡
(
そくせき
)
を追う
13
闇雲を貫き光る満月に遠く平和の祈り捧げて
9
柔らかく萌ゆる若葉の切れ間より望む湖上に小舟きらめく
11
尾根道に初夏の風巻き上がり 我が気鬱ごと吹き散らしゆく
9
地図もない自分探しの
流離
(
たび
)
の果て ようやく僕はここを見つけた
5
小夜ふけて歌集を
捲
(
めく
)
る指を止め 手編みの薔薇の栞を挟む
7
ゆったりと
腕
(
かいな
)
広げる大銀杏 葉擦れの音に心澄みゆく
12
裏山の険しき
径
(
みち
)
のその先で 天に
聳
(
そび
)
ゆる大樹と出会う
3
炎上のツイ見て学ぶ疎外論 人は理解の中で生きてる
3
得意気に指摘したのに勘違い 慌てふためき火消しに奔る
4
夜色のビー玉つまみ灯にかざす 心映して揺れる天河
9
初夏
(
はつなつ
)
の風に誘われ見上げれば 真白の小花 甘く
枝垂
(
しだ
)
れて
7
ヤッホーと街に木霊す昼下がり 幼子達は何して遊ぶ
9
輪郭も眉も額の
黒子
(
ほくろ
)
まで 他人の空似 心乱れて
7
焼け落ちた瓦礫の街に星降りて 平和の国はあまりに遠く
14
星々の紡ぐ
運命
(
さだめ
)
の物語 読み解けぬまま流されている
11
見送りて 後に我が身にふつふつと湧き上がりくる透明な意志
5
光にも闇にも変わるこの道を 小さな愛を灯して歩く
17
諦めに似た味がする珈琲と 紺青に浮く明けの三日月
5
里山に山吹の花燦々と 女神に捧ぐ太陽の
冠
(
かん
)
8
両の手に掬えるだけの幸せじゃ満たしきれない時代の渇き
4
情報に囚われ言葉見失う 愛なき世界紡ぐのは誰
4
陽だまりの屋根奪われた猫達が今日も立ち寄り宙を見つめる
11
飛んで火に入る珈琲と聞こえたり 確かに豆は跳んで火に煎る
5
分け入れば
馬酔木
(
あせび
)
山吹 山菫 媚びぬ命の春を
寿
(
ことほ
)
ぐ
5
僕たちは
夜空
(
そら
)
と
宇宙
(
そら
)
との境い目で 背中合わせの星を見ていた
8
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