たぬ吉
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なすすべも ないと思える夜にこそ ハチドリ習い 一滴の歌
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親という 一番近い歴史見て 繰り返さぬと誓ったんだが
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泣きそうな 親子に逢ったら 今度こそ 声をかけたい アメと折り紙
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光さす まくらの 温もりいただきて  しばしやすらぐ師走の窓辺
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来る年は 言祝ぐうたを 詠めるよう 願いを込めて拭き掃除する
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年の瀬に にぎわう街の踏切を くぐりし母子 ひきとめる修羅
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ふつうなら とっくに憎まれてるはずの 前世がたぶん猫だった人
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真夏には木陰をくれた くぬぎの葉  お疲れさま と ほうきでなでて
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正気ではやってられない世の中に なじめる狂気 身につけて冬
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分厚めの 段ボール箱に毛布敷き  冬じたくして あのミケを待つ
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とぐろ巻く 気持ちがとびだしそうになり 父と離れる時間を買った
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夜のびて 雨雲 空を隠すとも 月日はいつも この世 照らして
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外国語 学び初めて知る 母語の 身近にあふれる月とお日さま
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親と子が 孫とひ孫の顔になり ひいじいちゃんの思い出話
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お祭りと虐殺 同時にこの星で  人類はまだ スイカ食べてる
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30年前の君から 今届く 宇宙の中ではすぐ そこに居る
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星ならば 見えて届かぬ あたりまえ 君との間 30光年
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初蝉の 鳴いてすぐ止め 二度寝かな 夏まで少し もうちょっとだけ
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思春期の 中学68年生 卒業試験に苦戦しており
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さよならに聞こえてしまうありがとう 言えずに今日も またね で帰る
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珈琲の湯気ゆらゆらと 夜に溶け 遠くに灯りのともる日を待つ
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あの時が 最後だったと思い出す 未来が見えて だきしめる今
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そのへんの言葉じゃサイズが合わなくて 裸の気持ちがくしゃみをひとつ
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好々爺 看護師さんの前でだけ 家族はむっつり 柏餅食む
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戦後生き 戦前を生む 私たち せめて届いて カナリアの声
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黙々と 靴見て歩く道すがら 顔を上げて と桜に言われ
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病棟の 父への葉書に歌一首 余白で伝わるものの多かれ
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言の葉が 胸に詰まって ヒリヒリと 痛む夜には うたかたが効く
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10秒で 返信しないで ポストから 片道3日が ちょうどいい距離
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そこにある 風じゃない声 耳澄ます 人差し指で評する前に
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