平蓮世 たいらはすよ
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ハウスにて出番を待てる苗障子 待ちわぶ蝌蚪(かと)の揺らす青水
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春雨のまた降り出でて川面(かわづら)にいざよふ空を傘に振り切る
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特攻の記憶を抱きて五歳の児(こ) 前世をマリアに委ねて泣けり
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人並みに生きむとすれば遠ざかる里の欅(けやき)のうろ風の鳴る
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白髪を櫛けづる手もおぼつかぬ老ひが養ふ子の五十(ごじう)かな \8050問題
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爆撃の報せ聞きつつ朝餉(あさげ)食み平穏といふ常を知るらむ
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水銀の禍まがしきを振り下ろす体温計の熱日の記憶
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​初孫を抱けばミルクの匂ひして「あ」と「ぶ」でかぞふ雛人形ゐ
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トレンドに「戦争とめて来る」とあり卵の殻を忙(せは)しく割りぬ
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抱かるる稚児の指さす若葉へと春はたをやに森ひらけゆく
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​初節句よみつ軍(いくさ)を却(しりぞ)けし桃の力に君を護らむ
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身熱(みのねつ)す児(こ)を乗せ急げば看板の問ひに惑ひて右左へと
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泥濁る溝に小蝦(ざりがに)釣りし日は舗道となりて靴音の下(もと)
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遮断機の音の僻(ひが)むるつかの間に辛夷(こぶし)は銀の産毛ふふめり [題詠 辛]
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明治には身思ふ声を繋ぎしか音の遺産の壱号電話 [題詠 電話]
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手水舎(てみずや)に澄みて流るる一片のわづらひ 共に目は見ぬままに
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前髪に予報に違(たが)ふる雪触(さや)ぐ 凍つる美濃路の濁り酒かな
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席を去る人の背(せな)にし履歴とは誰(たれ)かと共に在りし日ならむ
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あどけなき貌(かほ)を見せつつ足下(あしもと)はわがものとせし悪茄子かな
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落書きの竹の生命(いのち)を削りしがともに枯れゆく傷深くして
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弾かれるやうに車両を抜け出せば肺の奥より息吹返れり
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まどんなと呼ばれし蜜柑いくかして萎むを見れば萬の元に
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歯に脆きポン菓子の板 零るれば 多分を鳩の糧に頒(わか)てり
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味もなき白湯をすすりて酸ひ甘ひわが身の内の塩梅を知る
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フレームにわがものとせし化石には一千万と我の二年(ふたとせ)
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電話置き空のけはひを伺へば凍つる奥羽の雪解(ゆきげ)は遠く
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アムール・ド・ショコラの熱ゆ這ひ出でて身に冴ゆる気や 冬の望月
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玻璃(はり)かこむ鉛はその美に沿ひてありおのが重さを知らぬがごとく
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解けきらぬ霜を踏みゆき貼り紙の冬物在庫一掃セール
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電話口怒鳴られてゐるあひだにも思考は既に特売の棚
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