平蓮世 たいらはすよ
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馬鈴薯に利(と)き包丁の刃元あて病巣削ぐごと小さき芽を取る
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雌だけに赤き実ひしと簇(むら)がりて梅嫌(うめもどき)の冬さかりとなりぬ  [題詠 嫌]
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モンステラ破葉(やれば)の隙に空を置きカラーチャートのごとく並べり
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生(あ)れし時逆(さか)ひて浮かぶシャボン玉追ふ子の指もふはりと躱(かは)す
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誓ひゐし旧館の壁にアイビーはまう離さずと許(ばか)りに伸びぬ
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パンケーキ今日も作りしターナーの隙間に見ゆる穴だらけの世
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地下鉄の闇は見てをり糸切れてなほ立ち揺るる木偶(でく)なる我を
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落つる実を数へて歩む曇日の単行本ほど重たき脳よ
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失せぬやう付けし鈴なる定番も今では熊を避くるため付く
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好物を作れば晩の電話鳴りかひあるべくもなき湯を沸かす
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炙られし桑名はまぐり口を開く中也の夜もかく暗かりしか
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結ばれし御籤に紛るる吉の字の加護は問はれず寒風に揺る
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馬鈴薯のもはらに伸ばす紫の毒は誰へと向かひゐるらむ
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東京の双子パンダの帰りゆく「人寄せパンダ」と辞書に遺して  [題詠 東京]
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ウィンドウの写(うつし)の額(ぬか)に重なれりバーゲンセールの文字赤赤と
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春の旬賑はふあとの食卓の皿をパズルのやうに重ねる
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蒲公英(たんぽぽ)や庭に届きし絮(わた)ひとつ植ゑてブタナと知りぬ粗毛(あらげ)に
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豪州の肉を噛みつつ和牛とはかくも遠きか年金の日々
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ははそはの母の湯湯婆(ゆたんぽ)しまはれて一万日の日は捲(めく)らるる
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土に舞ふ花弁さへも溝口の定まるところを知るがごとくに
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一年(ひととせ)に一度の福運なる日には列をなしたり来ぬ生(よ)を求め
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古寺の門をくぐれば背伸びすと四方(よも)を眺めるみつまたの花
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藤壺の花の重荷と伏す影の深きを君は踏みて行くらむ 〈題詠 壺〉
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青銅(からかね)の馬車(くるま)の守る火の影は八百の結びを誓ひし聖火
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たまさかに友とあふ日にくたびれし葱と歩けり古着など着て
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戦国の石高ならむ米足らず令和に知るや農のたふとさ
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鉄道の韻律わが身抜けゆきて乱るる魂は歌ひそめにき
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葉桜に囲まれ匂ひしるく立つ突羽根(つくばね)の木へ蟻の一筋
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マシュマロのはずんだやうに「ぼくもすき」愛しさ増せるホワイトデーかな
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シシリーの絵画のごとき春装の吾子鍵を開け朝日子となる
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