竹内すい
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投稿数
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幼子の記憶にだけまだ生きている 赤く大きく迫りくる月
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隣室の女の横でわふわふと笑う男がみている夢は
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あの席でちいさな夕日を見るたびに私がいること思い出してた
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稜線をすべる素肌のなめらかさ もてあます夜 青満ちる部屋
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背中にはまだ君といた海の跡 日焼けの羽をシャツにしのばす
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底なしの不安が情報食い尽くしあたまがいたいよねるねるねるね
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気泡たつガラスの海をはめている人差し指が連れ出す電車
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ケーキの火吹き消し細き煙抱くわたしに注ぐ電灯がくる
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わかりあうことなく寝息たてるひと 深い眠りにつけますように
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すのままの髪をうしろに漕ぐそばで車両も眠りし夕色のまち
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ダージリン飲み頃はかる砂時計 へっていくけどふえていくもの
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まごころが耳に反芻するばかりかき消せるのはタイピング音
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微炭酸メロディにほね溶けてゆく一人の朝をいわうはずだよ
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詰め替え用宙にゆっくり気泡をはなち 三月から来たあそびの風かも
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サイレンで道かき分ける消防車ダックスフンドも見届けている
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蝉の声とどかぬ暗室ひとり待つ浮きあがるまで 死後いと涼し
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マカオ編彼の本棚に戻すきり おとこは西へ歩き続ける
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空洞に寄せては返す息のおと 静かな夜にはやさしくなれる
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中目黒蛍光灯の大通り アフロ、プードル、アフロ、プードル
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舌にあまきカルビで我ら幸せなほど ほんとうのことは言えないままで
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浸かる湯をたゆたう光のちえの輪に目が揺れわたしはとうめいになる
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大雨に殴られ進む一歩ずつ 細き骨の柄もいちど握る
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「いつの日か迎えに行くよ」の音だけが跡になってるにんじん買おう
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どこからか母が持ちたる鼻歌を姉口笛でどこかへはこぶ
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生まれしこと素直に祝えなくて ひまわり一輪買って飾らむ
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行き先のある人達の交差点 白ふむ足に鍵盤が鳴る
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ぽつぽつりオリーブオイルの水玉が一番うれしい水玉模様
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カーテンの一条の光おりている君のまつ毛が問いかける朝
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白湯ひと口 浮かぶしょうがの年輪に生まれた朝をたしかめている
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事なせず寝つけられない部屋を出て ヒトの形になでる夏風
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