川辺村道
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ただ飄々と

「修理より買い替えだろうこの歌は」推敲中にため息で言う
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隠れ家のバーもあなたも過去となり今は角打ち辛口を酌む
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フッと消え意外な場所に現れる君の前世はカイツブリかも
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シャンプーに慣れて余裕の保護犬よシャボン玉ひとつ鼻先を飛ぶ
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「運転は本性出るね」隣から抜群に利くきみのブレーキ
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たましいの充電中と言うきみは猫のお腹に顔を埋める
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投了を決めてる棋士が形だけ攻める手を指す そんなプレゼン
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はじめての落語に挑む夏祭り 弾けてろうあの子が来てる
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初対面でわたしに吠えた犬はいま甘えるようにへそ天をする
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平和ほど脆きものなし弾痕の残る鳥居をくぐる真夏日
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しかたなく母の失踪宣告に踏み切る友と仰ぐポラリス
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能力のごく一部しか使われぬスマホと君はどこか似ている
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一匹のイワシとなって終電の漁火いさりびめいた明かりに向かう
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愛犬の震えにずっと寄り添った 雷鳴遠く去ってゆくまで
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この想いついに伝えず あの人はミストシャワーの中に消えたり
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一首だけあなたが褒めてくれたのは相聞でなくラーメンの歌
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遠吠えの聞こえて犬は飛び起きたオオカミの血が目覚めたように
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助っ人で来たのに邪魔をした私 アイスクリーム奥歯にしみる
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僕らしい巡り合わせだ 直前の人でたびたび閉まる改札
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物語の舞台変わって新キャラとつぎつぎ出会う 転職初日
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学校に居着いた犬よ授業中ぼくといっしょにあくびをしてた
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真夜中の万博会場歩きたい きみは詩人の目をして言った
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片付けに飽きてきた午後 木刀を構えてなりきる隠密剣士
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クラス会の余熱が今も続いてる あの子が近況尋ねてくれた
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ごまだれとポン酢みたいに君は言う「あなたも彼も両方好きよ」
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いたずらを𠮟られそうな柴犬がソファーで狸寝入りをしてる
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熱風は過ぎて戻らず 推し活で買ったタオルの小さなほつれ
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就活に疲れた夕べ ヤドカリがテレビで殻を奪い合ってる
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ちゃっかりと僕の寝床の中央で寝ている犬に「もしもし」と言う
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ふるさとに帰ると決めて初夏の駅 遡上してゆく鮎でありたい
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