川辺村道
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ただ飄々と

気になってまた会いに来た柴犬に「売約済」の真っ赤な文字が
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どこ行くのと聞けばあなたは宝塚歌劇モードで「風を探しに」
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片恋と不戦敗とをくりかえし さらりと澄んだ新月の空
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寝返りを打つたび揺れる胸の内 もう辞めてやる ここは我慢だ
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新聞の人生相談読みながら飲むコーヒーがひときわ苦い
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何であれわたしを負かす後輩は頭かきつつ「番狂わせっす」
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試写会を観てきた君のくちびるは つるり滑ってネタバレしそう
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とりあえず番犬だけど 人間はみな善良と信じてる
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退勤の時に出やすいじんましん ホッとしているサインらしくて
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この曲を最期のときに流してね 祖母の愛するポール・モーリア
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いつの日か通り抜けたし 日本一長い商店街の端にて
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投稿をやめた友から「人生の幕間まくあいだよ」と絵葉書が来た
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聴かれない副音声としてもなおあなたの歌を詠み続けたい
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公園に江戸の足音聞こえそう ここは土佐藩下屋敷跡
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姉ちゃんの声は涙で途切れたり『泣いた赤鬼』朗読しつつ
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ネットでの投句勧めてみたけれど祖父は杖つきポストに向かう
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寛解の医師は「患者の心境が分かったかも」としみじみ言えり
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リンリーンガタンギュインと言いながら路面電車をいてる園児
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仲立ちをしたカップルと写ってる 原作者って感じの顔で
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宇宙人のガイドブックの片隅に「美しいけど残念な星」
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誰にでも苦手はあるさ 散歩中猫に出会うと逃げる柴犬
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先輩はマンガ喫茶かサボりつつ結果出すのがプロだと言って
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知らぬ間に守られている日々だったトゲの刺さった軍手を仕舞う
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空腹にガタゴト響く鉄路なり 廃止されてた車内販売
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幕下の五枚目までは上がってた 郷土力士の引退を知る
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脚色の目立つ噂を聞きながら硬いトマトを噛んでるランチ
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あの頃は幸せ過ぎて友だちを失くしたのってきみはほろ酔い
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離陸したきみのジェット機 雨雲の上の世界に突き抜けてゆく
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選り抜きの豆で淹れようコーヒーを飲むとぐっすり眠れる君に
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ミステリーを読みふけるきみ 黒薔薇の一輪挿しのように静かに
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