石川マサヒコ
3
5
投稿数
22
けて翁は離農したりけり片夕暮れに米搗く芒種
8
寺町の通学路にて何事か言ひ掛けむとするの吃音待つ
13
君がためとて死せる兵士ひやうじの金鵄章などがために冥銭となる
6
くらぐらと寄生虫館に君眺む権之助坂には鰻の香立つ
4
午睡して邯鄲の夢に彷徨へばうちあふぎたる君をや見らむ
6
机に向かひてただマウスを動かすのみの昼過ぎの夏時雨
6
古人にも由無きことを書き付けて残したる者ありけるぞかし
4
パンツ一丁の自撮りでリアクションを稼ぎたる自傷行為かな
4
酉の刻を王莽が時と称すなり史書の間にも魔に逢ふらむか
5
紫陽花の異なる色におどろきて旅居たびゐの庭の雨しづやかなり
13
考試いざ走らする筆止まりたる時に学びの幾年かを見ゆ
6
奇怪なる字形の麺の大碗に薬味薫りて渭河は錦秋
5
雑踏に個を失ひし時にのみ顕れ出づる個こそわれなれ
8
非母語話者ノンネイティブの学び難かる条件異音のなぞ難かるかを知らぬ母語話者ネイティブ
7
明礬みょうばんむらをぞ誰か雲丹うにと云ふウタリに問はなむ如何でノナ食む
6
御朱印をひさぎし寺社に祀りたる神はえべっさんかヘルメスか
6
マーモット養はむとて電話帳繰りて郡部に名醫を尋ぬ
5
子らを飢ゑしむる戦火を招きたる親のアクラマチオンにわれ怖づ
4
旋律なく修辞のみなる七尾かやジャズのわたりて天狗舞ふらむ
8
太史公の筆を写し終はりたり晨鶏しんけいいづこうそまこと
6
口のに掛けたる遭難しからず異郷の水底にも海潮音あれ
4
鴨南蛮蕎麦に添へたる葱食はずんば午下の店主あるじは何をか思はむ
10