Utakata
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逃避行うしろは見るなひとときもこの一瞬を穿ち輝け
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飲み物に乗ったマシュマロのようにあなたの憂いが溶けゆくといい
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出る機会見失っては冷めていく湯船の中で今だけ人魚
9
早春の夜更けの寒い風の日に
詩
(
うた
)
にしたがい飲み干す梅酒
6
やることの余白を余計で埋めていく 締切前にパンケーキ焼く
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かなしみは氷砂糖のかたちして夜更けの紅茶に溶け出していく
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印刷を拡大しては点描画 月にも海があるのだという
4
おやすみの時間ですよと通知する画面上にも月は出ている
7
世界から切り離された部屋の窓にも春は来て花を咲かせる
6
もうずっと使っていない声帯で真面目に唱える「袋ください」
9
起こらない出来事たちを待ちわびる棺桶としての六畳一間
6
パチパチのはじける飴を口にした時の刺激で恋ははじまる
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なきむしの神様がいてこの雨も一粒ごとにドロップスだった
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昼前に鈍ったままで起き出して遠くに見える雪山の白さ
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明日うまくやれる確証がないままに明日の支度はきちんと済んで
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ふわふわのパジャマくらいだこの夜に甘く包んでくれるものなど
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なにかしら足りない気分のわたくしを夜更けのメトロがしずかに運ぶ
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漁火よいまだにいちばん欲しいのはわたしと同じ量の熱さだ
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つまらないものに囲まれつまらなく乾く心を抱える 終電
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持ち上げた缶コーヒーの空き缶はいつかなくなる魂の重さ
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目の覚めた午前四時半 薄闇をカブが往くのでひとりではない
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筆跡が蘇らせる君がいるなんのつもりかわからないメモ
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感情を書き出すメモの罫線に日没 部屋の電気は点けない
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たなびいた雲はかすかなばら色で別離の朝の空気は澄んで
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古ぼけた映画の海の水平線の果てに故郷がある気がしてる
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金色の犬のしっぽが上下して言いたいことはなんとなくわかる
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うつむいて歩く道路の真ん中にグミが一粒コーラのかたち
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会社には来たくなかった 同僚の猫の話をだるいまま聞く
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何もかも終わってほしいようでいて終わらぬ夜を朝焼けが裂く
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この年のすべてが収斂する夜に取り残される僕等いずこへ
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