てんてこ麻衣
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実体験を短歌にしようとしています

例えれば水の戯れより水の反映の方が好きな子が良い
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ピアノ弾く君の大きな手と指に、全てを込めて「蜘蛛みたい」とだけ
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弱りたる金魚を最期は我が家でと三百円で持ち帰る夜
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この列はかき氷ですか唐揚げですか五年ぶりの花火大会
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コーヒーをこぼした部屋は喫茶店めいてジャズなぞ流したくなり
7
アスファルトの上涼しげに転がりぬ羽化できぬまま死んでゐる蝉
4
心臓の鼓動か地震かこの揺れを布団と同化してやり過ごす
7
生きているように抜け殻つまみたる 命吹き込む五歳の右手
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初めての彼との花火大会の花火は一つも覚えていない
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告白をしなかった恋はいつまでも心に残る線香花火
8
仕事場に電話をかけると普段より優しい声の母の「どうした?」
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包丁でざっくり切った親指の別個の生き物のような脈動
5
排水溝ネットの中で売られてた時より元気な何かの菜っぱ
8
玉ねぎの芯の方から腐りたる 誰にも言えぬ秘密あったか
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二児の母になっても昔の片想い思い出すとは知らなかったよ
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長い旅楽しんでるかな時々は私のことを見てたらいいな
8
ロングから刈り上げにした首筋のジョリジョリ愛し私は私
6
引越しをするぶちぶちと根を引っこ抜く音がする住み慣れた部屋
3
おひたしにするはずだった菜の花が最期の時を謳歌している
5
子の前で初めて泣いた今日が子の記憶に残らなければいいな
7
さっきまで生きてた母の体温のまだ残る背に手を差し入れる
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お風呂に湯ためてる間キッチンの水はアルプス冷たい痛い
3
母親の嫌なとこだけ思い出す亡くなったこと平気にしたくて
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サイレンの鳴り響く夕この街は私を静かに拒絶している
5
愛に似た呪いのかかっている私 服は全て母の好きな紺
8
神様が爪切りをして飛んでった欠片みたいな昼の月だね
4
この世にはいない人への恋に似て天体観測は少し切ない
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千五百万年前の地層から伸びしたそうに貝が出てくる
3
十七も三十一も素数なり割り切れぬもの詰め込むに良し
5
夜の道うしろから来る足音を怖がらなくていい性別ほうが良かった
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