箔塔 落
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※が末尾についているものは、Twitterで註を付しております。

初恋の記憶に添えられた白薔薇のひとつを取り上げ飾る午後もある
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きりんのを撫でる指先が緑に燃えはじめやがて樹へとりゆく
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象牙色の舟は炎に包まれて祖母が渡るは橋のない河
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何もかもあげる まぶたも舌も爪もくるぶしに生えた赤いキノコも
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足のある獣のように木枯らしは黄色いチョークの子供を抱え
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空の色が見下ろす屋根には放射されレンズの向こうに水色の街
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紙の上で夜は明けてゆき頁を押さえる指までも照らし出される
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拳大に固めて叩きつけたならこれが怒りとわかるだろうか
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からっぽの壜にちいさな象がいてその背中から落ちかけている地図
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磔にされた男をイラクサの怒りの棘ごと火焙りにする
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青年の羽よりも薄き胸からシャボンが涙のようにこぼれる
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大きな手に潰されているような夜がきて楕円の闇が広がってゆく
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刺す風がやわらかみを帯びそして凪ぎ次吹く風はまだ知らぬ風
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傘の上に降る雨は地に落ちるさだめ知らぬがごとく放射状に遁走する
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差す傘に重さを感じるほどの雨涙うるい 赤血球を欠いて透明
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廂から雪が落ちるたび小屋の中で小刻みに鳴きながら歩き回る鶏
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七人の小人がやおら割る薪の乾いた響きが冬晴れを衝く
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塩を撒きいまはもう亡い人の靴に触れて離してそっと揃える
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匿名のあなたとわたしが弁護士を通じて生身のきみとぼくになる
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まぶたの奥の硝子扉を封鎖して深い深い泥の底で手を繋ぐ
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うつくしいあくびとうつくしくはないまばたきをするひとをあいした
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世界中に慈雨は注いで動かない観覧車なども野生に還る
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花ならば争いながら咲けばよい (けれど)ヒトは、(もしもあなたが)ヒトなら
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愛された子供のように花は降り水面をうすももいろに鍍金めっきする
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球場で作家はゲラを抱きかかえサヨナラヒットに背筋を伸ばす
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煙突の掃除夫たちが粉雪の中煤まみれの手でつまむピザ
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もうそこに家鴨あひるはおらず逃げ惑う家鴨を追いかける農婦もいない
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ひとつずつドットを手打ちするように頭のなかにある未来を描く
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粉雪がレンズについて印画紙を一枚めくるごとに溶けゆく
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かなしみを布張りの表紙に閉じ込めてだれでも読める叢書にしたい
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