漂葉瑞季
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投稿数
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閑寂の空き家に『売地』の幟旗のぼりばた 風なき朝にきいきいと鳴く
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五十音から選ばれし三十一みそひとが描く色彩 無限の画布キャンバス
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見えなさに色艶やかさ見えしにて シャツのボタンをすべて留めたる
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何事も極めたるれば武器となり我が身を助く刀なるやも
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水道管工事の音に思ひ知る 生きることとは騒がしきこと
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忘れたくないことばかりこぼれ落つ 書きて記憶のくさび打ちたり
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喜怒哀楽 四本足の椅子ならば二本で立つ人どれを捨てたか
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ただ在りて重ねし過去が人生の轍となりて今を支えむ
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まだ早い 裏にしたれば もう遅い 成りて弱るは 我が心駒
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朝起きて手癖でつけた冷房エアコンに身を丸くする秋のはじまり
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代弁者になれないぼくは表現者 ひとりよがりのゴミ箱のうた
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僕のいうアイラブユーは月が綺麗じゃなくて君がいちばんきれい
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家族とは重しかまたは礎か世の波荒くば碇なるやも
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問題を解き捨てたあとの空白に新たな問いを無理矢理はめる
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僕に聞くでもなく育児本を読むでもなくまずは君の子に聞こう
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暑すぎて 夏日なつび憎らし しろくまと サクレ欲すてふ あとガリガリ君(百人一首・二番に寄せて)
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「我といふ人の心はたゝひとり」君もさあらば共にありなむ(谷崎潤一郎氏の歌に寄せて)
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ありがとう 酷暑をともに闘ったTシャツの色あせに気づいて
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入眠にボレロがよいといったのはだれだ宇宙が爆ぜとびおきた
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部屋干しのにおいがすごくしぶとくて少し羨ましいとか思う
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カッコいいことをしようよ短歌とかシブくていいね えっと「あきのた」
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将来の夢を聞かないでください 今日のタスクも見えてないのに
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遠すぎることはないけど近すぎることもない距離 手は届かない
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夢は夢のままにしておくすこしだけ小さな歩幅でゆっくり歩く
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わたしにも名札をください大きくも小さくもない普通のそれを
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あの時の「友達だよね?」本当の意味に気付いた五年後の今日
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現代の自給自足は農業をすることでなく金を追うこと
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風船の空気を抜いて丁度よく他人ひとの目線で漂うように
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五十音 私の表は少しだけ足りないらしいが話せてはいる
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僕だけが服を着たまま泳いでる日も暮れたのにまだ泳いでる
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