はじまりはじまり
新月を盗んで睫毛に暈(かさ)かける少女は潮騒指をくぐらせ 3
愛のバラ 夕暮劈(ひら)いたさようならおあいこだったよきみの弱さと 1
はじめての街で拾いし夕星(ゆうつづ)をきみの窓にもそっと届けむ 6
夜深し持て余すほど自意識の発酵文字できみ焼くパン屋 1
後(のち)の月散りとどまれる花なれば欠けし二夜ぞきみとすまばや 2
十三夜ふちの欠けたきみの茶碗黒い扉の鍵を探して 2
きみが鮮やかすぎたので背景ばかり見てた午後驟雨の脰夏宿り 2
パンダ見に富士へゆきたい各駅で三十五円の思ひ出触れに 2
海を知る少女がわれに風を編みいつも両手を広げていたり 2