六井象
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短いものを読んだり書いたりするのが好きです
小説→( https://tomokotomariko.hatenablog.com/ )

想像の十倍怖かった先生の死に顔は想像の十倍優しい
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熱された油の中でニンニクが弾ける夜に満ちていく孤独
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かたつむりLINEの返信待っている間にどこかに行ってしまって
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手の上で眠る小さな命にも恋の季節も換毛期もあり
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病室に差し込む夕日が壁に映す点滴袋の水っぽい影
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窓際で夕陽を吸ってぬるくなった水で飲み干す眠剤一錠
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メロンパンばかり食べてるあの人がおかかおにぎり食べてる日曜
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駅前の居酒屋の他は何一つ変わらぬ故郷に降る粉雪
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焼肉屋の匂い漂う夜の道をコンビニ袋揺らして歩く
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何気なく拾った木の葉を川に投げる海へ着く頃私は何を
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新しい日の陽の光に満ちる部屋祖母の遺影が濃い影落とす
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イートインスペースで熱いコーヒーを飲みつつ別れのLINEを推敲す
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四年ぶりに出した喪服のポケットにあの日舐めそこなったのど飴
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パンクした自転車とともに帰る道汚い川に夕日がきらめく
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電話切った瞬間ずっと舐めていた飴噛み砕き歯を痛めてる
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来月で満一歳になるデグー履歴書を書く俺を見つめる
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三枚のティッシュで拭う鼻水と涙とカップうどんの七味
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春の雨首輪をつけた白猫は雨が止んだらさっさと去った
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雪の日にあなたと交わした約束が蝉の鳴く日に破られてしまう
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自転車のベルを鳴らして走り去る叔母の小指に巻かれた包帯
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十八の春は小さな棘としてそっと触れるたび小さく傷つく
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海を撮り充電が切れたスマホ手に潮風を浴びて一人で歩く
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子のために林檎を一つ剥く夜のテレビは台風の接近告げる
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今日もまた仕事の話しかしなかった真夜中のコンビニのど飴を買う
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終電の吊り革を握る右手から昼間絞ったレモンが匂う
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隣家から布団を叩く音がして布団から出て熱測る私
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午後五時の楽器店にて少年はギターの弦の値段を見てる
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冬の夜のカップラーメンの三分は別れ話の間に過ぎゆく
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古い椅子の背もたれに背中こすりつけ痒い所掻く今夜は独り
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長い散歩から帰ってきたネコのひげに真昼の雪がくっついている
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