Utakata
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六井象
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短いものを読んだり書いたりするのが好きです
小説→(
https://tomokotomariko.hatenablog.com/
)
春の雨首輪をつけた白猫は雨が止んだらさっさと去った
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雪の日にあなたと交わした約束が蝉の鳴く日に破られてしまう
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自転車のベルを鳴らして走り去る叔母の小指に巻かれた包帯
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十八の春は小さな棘としてそっと触れるたび小さく傷つく
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海を撮り充電が切れたスマホ手に潮風を浴びて一人で歩く
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子のために林檎を一つ剥く夜のテレビは台風の接近告げる
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今日もまた仕事の話しかしなかった真夜中のコンビニのど飴を買う
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終電の吊り革を握る右手から昼間絞ったレモンが匂う
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隣家から布団を叩く音がして布団から出て熱測る私
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午後五時の楽器店にて少年はギターの弦の値段を見てる
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冬の夜のカップラーメンの三分は別れ話の間に過ぎゆく
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古い椅子の背もたれに背中こすりつけ痒い所掻く今夜は独り
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長い散歩から帰ってきたネコのひげに真昼の雪がくっついている
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真夜中のコインランドリーの床にひらり桜の花びら舞い落ちて春
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夜七時病院からの帰り道バスの窓の外初雪が降る
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ため息も白くなってる冬の夜自販機の前で小銭を探す
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自転車のかごに入れられやってきて小さな庭で割られるスイカ
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酔いざましの水がゆっくり喉を過ぎ夜が明けるころ別れを切り出す
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軽トラの荷台に積まれた扇風機冬風に吹かれ夢から覚める
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病室の窓から見える公園に今日もピンクのボールが跳ねる
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朝食のパンを焼きつつ元日の晴れ渡る空私はひとり
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一月のペットショップの店先で白い息吐きつつ犬小屋選ぶ
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病院が取り壊されて空き地になる世紀末を過ごした病院が
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明日は誕生日ヘッドホンはめる時計の音が聞こえないよう
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自らが作ったまずい一人飯口内炎を気にしつつ食う
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二十年前のUSBを開けば二十歳の君が作業着で笑う
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休日の海から街へ帰る車中沈黙を包む干物のにおい
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寝る前に飲む錠剤の一粒が床に落つ音ネコが振り向く
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