法尉蠱毒
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投稿数
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1997年生まれ。

外つ國へ羽搏く筈に墜死せる雛の骸を汀に埋めて
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あれは雛これも雛よと狂火の橋桁に影を縫ひ留めし朝
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卵殻を破らばヨハネの首級のごと耀う雛が画布を視て居る
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晴天に喰らふ夢なく事切れし獏の骸を戦火へ焚べる
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裏山に祀られしモノを忘れなと云ふ姥の抱く嬰児に痣
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骨のごと皓き槽に満つ爹児タールへと燐寸を投ず我ぞ火車なり
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芳年の筆先のごと孕女の胎裂きてみよおまえの血筋
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陽溜まりに微睡む犬を撫づ手指の皺に憶ゆる白詰草を 母へ
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十字架は幻なりと汝云ふに罪濯がれたりゴルゴダのごと 父へ
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風吹かば軍靴の響き聞ゆとて秘めにし誉を獣と云ふ
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入水せしをとめを喰らふ咎故に鮫の泪は融けずに凝る
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敷島に殉ぜしをのこも人なりき朽ちよ爛れよと青猫の云ふ
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けだものまなこな輝りそ未だ晝なればてぞかし餌の居並ぶ夜を
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縫包ぬいぐるいだきつ籠る雛のまま年経りてなほ世のおそろしき
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田園に啼きて撃たれし土鳩さへ巣立てぬ雛を喰殺しをり
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春風が蹲る華の枷解かば黒山羊の眸にもモネの来たらむ
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雪景に「ぼとり」落つ赫 華の赫 國を憂いて忘我 血振いす
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寒空に和毛を曝す幼獣の震え止まねば詩書を火に焚べ
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飼主ゴシュジンの夢には血雨が降るから」と山高帽を被る青猫
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死して尚「赦す」と微笑わらう貴女への思慕を綴れど褪せぬ罪咎
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春雷に悪魔と契る幼児の首刎ね飛ばし罪濯がばや
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テセウスの舩を解体バラしておいて呉れ 此処迄が僕 其処からが君
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痛み無き體を手にし彷徨えど殺める度に修羅は哭くらむ
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剃刀の動機がstemを喰む度に血染めの白兎は秒針を追う
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わたくしはヒトに誕生うまれて幸福しあわせです 獣血を受ける皿の如くに
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野晒の髑髏されこうべを噛むけだものが朔夜に人の言葉を話す
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蝕の夜に手頸の疵は黑く咲き貴女の闇を華に喩える
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獄死せし友を弔う夕照のごと枯れる向日葵に咎をかさね
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死を悟る閻魔蟋蟀の啼く宵に呪詛は密かな因果を称す
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泥土に咲む蓮が末期を報せれば蜻蛉の翅は枕辺にて鳴る
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