古瀬葉月    フォロー 3 フォロワー 20 投稿数 81

新聞歌壇などに入選した短歌を中心に掲載しています。普段はツイッターにいます。

血の管は葉脈に似てきみが樹であるなら雨になりたい すきだ 

ディストピアを抜け出したいって生きつつもコンビニおでんに救われている 

ほんとうの君を知りたいと言われたわたしを遠い場所から見ていた 

中尊寺金色堂が開かれるときの手順でただしく眠る 

むき出しのいのちに触れる深きへとゆけば裸電球のやさしさ 

映写機は脳裏にあってソビエトの映画みたいにつらい記憶が 

焦っているふうを装いほどほどに誤字を含ませ遅刻連絡 

怪物の棲む蜃気楼うつくしいままあれきみの婉曲表現 

‪ざっくばらんにばらばらになるわたしたち平和は黙殺することですか‬ 

知られるのこわい 知られないのこわい 半透明の家を探した 

真夜中の信号、自動販売機、わたし、働く路地を照らして 

遺伝子の乗りものならば僕たちはなんときれいな舟だったろう 

目をかたく瞑れば見える砂嵐、機械でないと証明できない 

もうずっと幸せ/不幸という時のか細い線の闇を生きてる 

終わらない映画のような過去みたい 神経質な雨音がして 

実物に会っておどろくあの人の名前に顔や声があること 

椅子などは概念ですし腰かけた途端に立ちどころに現れる 

感動のさなか震える心臓と皮膚、ひたすらに置き去りの思考 

shineとは死ねと読めるがほんとうに今年はそんな夏だったのだ 

なんでもないように振舞うきみの背の皮膚が覚えているアスファルト 

‪こころにもないことを言いざわざわと魔物が生まれてくるなら今だ‬ 

‪包丁のやいばに触れた冷たさにああまだわたしは人間ですね‬ 

輻輳する(わたしをここに(深部には( )うつろ)探ってみせよう)こころ 

光射すほうへ僕らは吸いこまれ夜ごと夜ごとにやさしい液晶 

液晶を見る横顔のはかなさよ幻になってゆくなら今だ 

鉛筆の芯がしずかに砕けゆく明日の強度を信じて生きてる 

マネキンもかなしい夢を見るだろう ともだちふうふこいびとかぞく 

遥かなるねじまき鳥を見るように彼女はいまも仕事を辞めない 

こころとはどこにあるのと呟けば僕のうつろにうずくまる猫 

分岐する街 広報の世界では32年の祭も告げる