古瀬葉月    フォロー 3 フォロワー 20 投稿数 97

新聞歌壇などに入選した短歌を中心に掲載しています。普段はツイッターにいます。

わたしにも砂地があって夕立も降るから今日は名前で呼んで 

整数解のひとつみたいな君を目で追ったときには始まっていた 

わたしたちしあわせでしたわたしたちしあわせでした、でもいつからか 

風のない春も春です制服を脱いで可塑性そのものの君 

そこでしか繋がりがない人がいるだけのSNSやめられない 

あいつらの「このクラス最高」って言うクラスで僕は透明である 

波に洗われたガラスのやわらかさ鋭利な時がわたしにもある 

お財布も電話もラジオも一台に収まりいずれすべてなくなる 

食費しか削れないけど減る体重よりも重たいコートが欲しい 

無駄なものばかり集めてしまうという友にとっての友人がぼく  

AIに殺されそうになりいつも怖ろしいなあ自然災害 

ほんとうの暴力ほどに見えなくてあなたの「馬鹿」はいつもやさしい 

快速をわざと逃して生きづらいほうのわたしで見てる夕焼け 

手を握ることさえできぬ過去を抱き哲学になるだけの幸せ 

本名で検索してもなに一つ分かりやしない きみを知らない 

死んだなら雨になりたい知らぬものなどこの世からなくなってゆけ 

まだ海を見たことのないときの海みたいにきれいだった初恋 

木漏れ日がその首筋に遊ぶとき木漏れ日であることを羨む 

駅員の白き手袋その下に指輪があるかないか降ります 

庭でさえ外つ国だったあの日からずいぶん遠くまで来たものだ 

闊歩せよ悲しみという悲しみの積もってやわい絨毯をゆけ 

置き手紙のようにわたしは捨てられない存在となり折りたたまれる 

雨粒が雨垂れになり雨でないものになりゆき僕たちは死ぬ 

この町の道も娯楽もスポーツも教育もすべてイオンに通ずる 

君となら老いてゆきたいけれどまだ奨学金のことは言えない 

この人はティッシュを受け取るだろうって久々に期待されて泣きそう  

新しい生きものになる自らの血で引き換えたお菓子を食べて 

「短いの似合う」と撫ぜられた髪が背中にゆれて昔話だ 

わたしの青とあなたの青はしんじつにおんなじ青か 空が青いな 

ガラスとは液体である。ぼくたちは割れてしまった水なのだろう