古瀬葉月    フォロー 3 フォロワー 20 投稿数 80

新聞歌壇などに入選した短歌を中心に掲載しています。普段はツイッターにいます。

木漏れ日がその首筋に遊ぶとき木漏れ日であることを羨む 

駅員の白き手袋その下に指輪があるかないか降ります 

庭でさえ外つ国だったあの日からずいぶん遠くまで来たものだ 

闊歩せよ悲しみという悲しみの積もってやわい絨毯をゆけ 

置き手紙のようにわたしは捨てられない存在となり折りたたまれる 

雨粒が雨垂れになり雨でないものになりゆき僕たちは死ぬ 

この町の道も娯楽もスポーツも教育もすべてイオンに通ずる 

君となら老いてゆきたいけれどまだ奨学金のことは言えない 

この人はティッシュを受け取るだろうって久々に期待されて泣きそう  

新しい生きものになる自らの血で引き換えたお菓子を食べて 

「短いの似合う」と撫ぜられた髪が背中にゆれて昔話だ 

わたしの青とあなたの青はしんじつにおんなじ青か 空が青いな 

ガラスとは液体である。ぼくたちは割れてしまった水なのだろう 

ある法が制服を着て片隅で居ないがごとく座る美術館 

詩とは詩でしかない きっとどこかには見たことのない海が待ってる 

突風に花びらあまた舞い上がるイメージで来たきみの耳打ち 

‪哲学に出会った子ども死後という二文字は解けずうつくしい朝‬ 

‪エンドロールのあとに何かがあるもので深い眠りの人を見ている 

風ふけば意味与えられ風たちは何万年も詩を続けている 

目が覚めて暮らしは夢のふちにあり薄靄のさき待つ░░░░░ 

飼い慣らされたものだと思う携帯の充電コードに繋がれている 

魔術的光景である僕ら史上きみがはじめて取る耳飾り 

‪「そんな風に」そんなかぜに、と誤読して本より出でて止まらぬ風‬ 

銀と白、違いの謎を解くときに「光」なる新色に気づいた 

海原の波間に銀を見たら夏、また雪原に見たならば冬 

雪たちに初めてがあること知らず犬はよろこびそのものになる 

絵のような海をながめるその絵とは海があるから生まれたはずだ 

方舟を知らないけれど方舟を思ってゆるく揺らす あなたを 

戸棚から調理道具がなだれ出てシャララシャララとこれも幸福 

血の管は葉脈に似てきみが樹であるなら雨になりたい すきだ