成久敦也
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二十八歳資格浪人生

思ひ出す浜の秋風浦の里安芸あきの秋にも風は吹けれど
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月追ひし都を落つる旅の空夕日をしたひ宿や定めむ
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朝日さす東の空を遠くして西の空辺そらべに暮るる我が身ぞ
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夏草の色ぞ染めにし空蝉うつせみよひぐらしの声秋を待つらむ
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静かなる瀬戸内海せとうちうみの彼方にも望む島々大和なりけり
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願はくは今一度いまひとたびの春を得て過ぎし悔ひ路を辿り行かまし
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かおり立つ煙の中に光る灯はほのかに揺れて今に消えなむ
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夏の夜は短きものと知りながら涼しき月の惜しまるゝかな
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月照らす稲の花よりかはず声姿あらねどいとど恋しき
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厳島いつくしま おごりて去りし波のごと平家へいけの跡に人は酔ひつつ
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天の川涙の雨にあふれつつ橋も渡せぬ君ぞ恋しき
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川の辺に匂ふ菜の花五月雨さみだれに濡れにぞ枯れし春は過ぎゆく
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君見ればき世も晴れて咲き渡る椿つばきの花の色ぞ変はらず
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君が声忘れじものと刻みける胸の内にぞ傷は残れる
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めねども香ぞ残りける恋の花わずらはしくも美しきかな
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五月雨さみだれに濡るる紫陽花あじさい色深み君が心の移ろうものかと
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霧深み我が旅のみち見えなくに路傍ろぼうの花は美しく見ゆ
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何処いずくにか君がおもかげ誘ひ去る春の東風こちこそ花を散らしつ
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廣島の土に芽生めばゆる新樹しんじゅかな根本深きにしかばね抱きて
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寄せ返す波のうへにぞ揺らぐ月夢と見えつつ及ばぬものを
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かお皐月さつきの空に遅桜人目もあらでひとり散り失す
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世の中は川の流るることながら水にくだくるいわも在りけり
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武田山古戦こせんの跡をしのぶれば澄み咲き誇る勿忘草わすれなぐさ
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春の世にひとりたたずむ夜桜の散りゆく様は夢にこそ似る
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降りしきる雨に打たれし桜花さくらばな色落ちもせず散りもせぬかな
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川のさかのぼりてはおもほゆに幼心の澄みしおぼえを
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くずの香はしといとうも見返せばなほその色ぞ美しきかな
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いつ見ても 清流 せいりゅうにして三篠川みささがわ我が心にも派川はせんたま
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待ち人よ待たれる人は今何処いずこ雪積もる道足跡も無く
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いにしえさかえし村も今はただ雨降り溝に水が流るる
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