同人誌や商業誌に掲載した歌から直近の歌まで、新旧ごちゃまぜで投稿します。noteでエッセイや小説も書いてるよー。
さよならが機能している街角で恋人たちは振り返らない 6
これからもアイスの溶けない距離にいて 甘噛みされた耳に疼痛 2
いくつかの台風のあと町を出る 行きがかり上恋しただけだ 0
フレットを押さえるような自然さで約束交わす夜の講堂 1
竿先に魚信微かにあるように予感はいつも揺らめきながら 0
シャガールの絵画のようにふりむいて変な角度で口づけられる 3
ほめられた服は忘れずボストンに詰める小さく小さく折って 3
旺盛に僕は生きるよジェラートをそそり立たせる銀色のヘラ 2
明け方の産業道路 ああもっと動体視力をつけなくちゃだめ 0
アイロンの余熱でプレスするように少し続いた逢瀬を思う 1
責めたこと責められているキッチンで小さな鍋が集めるひかり 1
好きになりかけて忘れる途中まで溜めたスタンプカードのように 1
ぴっちりとマスクを着けて眺めれば自粛できない若葉が萌える 1
五月にもなれば誰かの熱を知る最後にあなたが褒めた指先 1
眠らない世界の果ての図書館で甘いゼリーを啜っていたい 2
耳元でわーわーわーと叫んでよきみをどろりと忘れた朝に 0
でもいつかニトリの三徳包丁で刺し違えるわ遠い窓辺で 2
底辺でわかりあえたら嬉しくて放恣な姿さらしてねむる 1
後ろから修飾されてフランス語みたい 恋人、自由な、初夏の 1
膀胱炎になってもいいからこの人の隣りを今は離れたくない 1
この電車に一人くらいはいるだろう今日誕生日の人おめでとう 1
つないだ手いつか手錠に変わってもいいと思っている月の下 1