山本千景    フォロー 65 フォロワー 37 投稿数 400

93年生。歴史小説とファンタジーと少しの不思議で育ちました。古典和歌と唐詩、蕪村が好きです。近代詩と現代詩はまずまず。前登志夫、岡野弘彦、高野公彦、永井陽子。(環さんへ。連作表示に対応予定とのこと、楽しみです。さらに詞書にも対応していただけると小躍りします。)随想録……https://kyogoku-korin.hatenablog.jp 未来短歌会の紀野欄を休会中。

おめおめと生き永らへてゐることの嘘ばかり増えてゆくが哀しき 

ひたぶるに肝傷ませてむらぎもの心さへ灼き棄つるうれしさ 

それを知つてどうするのかといふ問ひになほも重ぬる検索おろか 

始まりとなることさへも叶はない焦點の近すぎた交錯 

生きとし生けるものののすべてが似姿の光となりてわれに迫り来 

凡愚一切焦土となさむ試みの気負ひさへあたたかく日の照る 

喉もとに控へゐたりし忌みことば朝燒けにまづ焦がれ果てたり 

お誂へ向きの冰雨に繰り出して冷むるなき身熱を晒せり 

卽席の無賴うつろに冬曝れの槇の木蔭に酒をかたむく 

霞絶つ霧立つ槇顯つ鴫の発つこゝろ深くに虹の架かれり 

面白都々逸からず浦の苫屋に花の乱れて咲くぞ見ゆ係り結び破格 

荒ら旋頭歌屋に棲む心にて詠む歌あればあばら屋は澄みゆく風のすみかとなりぬ 

背に都々逸暮れかゝる日の明るさに見えざる月のこゝろかな 

破れ都々逸て碎けて裂けて散るかな歌とあたし徒しの戀ひの火は 

歌を都々逸詠みゐるおのれしさに思ひ寝となるはしり雨 

みづ旋頭歌からを根に据ゑしに咲きたる花はみづからの根にのみ咲ける花にしあるらし 

歌といふあばら屋に棲む心根をいつか我が身のさねとやはせし 

の夜を良經卿におどろき果てて夢のうちに咲きもせぬ花の散るを見たりき 

詠む歌の達磨となりし夕暮れのそれもよからう雪のかまくら 

明星あかぼしのさらさら燈る宵なれば逢ふべきものを庭の牡丹雪 

みづからの手にて繫ぎし絆さへ今や龜裂の果ての古伊萬里 

疲れたる身は何者に取り憑かれたるや此岸に名をば欲りせり 

餓ゑてゐる。喰へど厭かざる現し身の滿つれどもまた空になるのみ 

無きをこそ敢へて詠はむこゝろみの果てを凍りて出づる月あれ 

詠み捨てて捨てにしのちの塵芥ゆきて轉がる孤蓬となりぬ 

ぬばたまの黒々とせる自嘲ひとつぶらさげて歸路になつてもゐない 

文學は繪にも音樂にも勝てぬ、さも考へてゐる風情なり 

枾の木の葉が落ちてゆく橫溢の明き實のみをそこに殘して 

耐ふといふ動詞はかなく雪解けのなか見えそめてゆくふきのたう 

ひととせを不意にしたりし落魄のままに迎ふる春の極彩