山本千景    フォロー 65 フォロワー 37 投稿数 400

93年生。歴史小説とファンタジーと少しの不思議で育ちました。古典和歌と唐詩、蕪村が好きです。近代詩と現代詩はまずまず。前登志夫、岡野弘彦、高野公彦、永井陽子。(環さんへ。連作表示に対応予定とのこと、楽しみです。さらに詞書にも対応していただけると小躍りします。)随想録……https://kyogoku-korin.hatenablog.jp 未来短歌会の紀野欄を休会中。

継ぎ接ぎのシャツが流行つてゐるけふを継ぎ接ぎの歌が持てはやされて 

夜をゆく鐵道があり、さうですね當驛止まりだと思ひます 

夏の暑さに心はすでに朱華跳ねず色の翳りを帶びて冬へと向かふ 

ほんたうに人が嫌ひになりさうだ百日紅ぼろぼろと落ちゆく 

別れを、手當たりしだいに告げてゆく夕暮れの影の濃さに紛れて 

いかな火といへど届かず雪だるま半ば凍りてわがみなそこに 

むらぎもの心はすでに冬めきて霜を融くべき火酒こそもがな 

一匹の猫が佇む傍らを息づいてゐる路地といふ闇 

たましひのさけびはいとも鮮らかに歌といふ器に盛られたり 

僕たちの夜に生まれる影はすでに月からのものではありえない 

終賣の火酒を注ぎて食むヴァニラアイス、悖德的なゆふぐれ 

哀しみの露ぞ凍れる冬の夜に零す溜め息もう眠らうか 

拍動を失ひたれば空蟬は琥珀の色を湛へて眠る 

疾驅する光、すぐにも忘却の憂き目に遭はむ蟬の羽衣 

街燈がほんたうに邪魔 雲ひとつ流れてゐない眞夏の玉兔 

遠目からでもきみがゐることわかつてた いつもの黒猫と睦みあふ 

搖らめきて火のごときかなサイファーの歸路に飲むウッドフォードリザーブ 

夕暮れを世界の終はりと思つてた子どもの頃の記憶に沈む 

鳥にあらぬ身にしあるゆゑ飛びえねば君が殘り香眺めてゐたり 

行き合ひの空に眺めて微睡めば日暮れを過ぎて降る小夜時雨 

かたまけて雁が音寒きゆふまぐれ月の光に梢ぞ叫ぶ 

小夜更けて遣らずの雨をこひねがふ月も見えねば君な帰りそ 

しかと見よ花の散りゆく儚さを見ぬ世へと相渡る二人の 

舗装路に夏こそ果つれ形骸のされどみづみづしき腹わたの 

ひとときを水のうからとして遊ぶ見ぬ世の友と連れ合ひながら 

葉櫻のうへを落ちゆくひとしづくうすき縁の風に吹かれて 

あらかじめ知れつることも呪はしき心の花を散らす春雨 

世界から背けてしまふ心根のあゝこれはカブトガニのうらがは 

度一切苦厄、迦楼羅よ眼と耳と世を燒き祓ふ天の火もがも 

散る櫻、盡きる煙草の明るさにわたくしの物語は終はる