檜山流霞    フォロー 56 フォロワー 32 投稿数 304

93年生。歴史小説とファンタジーと少しの不思議で育ちました。古典和歌と唐詩、蕪村が好きです。近代詩と現代詩はまずまず。前登志夫、岡野弘彦、高野公彦、永井陽子。(環さんへ。連作表示に対応予定とのこと、楽しみです。さらに詞書にも対応していただけると小躍りします。)随想録……https://kyogoku-korin.hatenablog.jp 未来紀野欄

戰争に関はりしその一點を突かれて前川佐美雄たじろぐ 

五七五七七といふ韻律のかつて奴隷と云はれてゐたり 

詠歌てふ營爲を詠むは薄ら氷をみづからこぼつごとく淺はか 

咲く花をあだなりと見るこゝろなど捨てよ紗幕に月ぞちゆく 

散る花は來世のための種にして蒔かれてゐたり日ごと日ごとを 

流れ去るものにあらねばわがうちをとどまる霞あはくほのめく 

夢のうちに夜雨やう降りをへてゐたらしく今朝こんなにもれてたけなは 

ケ・セラ・セラこゝろ深くに棲んでゐたまつくろくろすけたちが出てゆく 

受け身よりほかに形のないゆゑに生まれるといふことのかなしさ 

意志などは介在しない 影と闇とそのなかに住むはずもなかつた 

一杯の燒酎がやがて三杯になりそこでふと醒めてをはりぬ 

くたびれてその日暮らしの寂光のうちへと向けて降る蟬時雨 

登るべき丘を見つけて華やいだ。轉がり落ちてからすぐだつた。 

和歌といふ言葉捨つるもかなしけれ干潟となりし浦のありけり 

短歌とは何々である ともすれば自己言及となりつるあはれ 

ひたすらに泣いてばかりの少年がふと影送りしてゐたやうな 

命日、と呟くことが影おくり記憶のなかの校舎が朱い 

色褪せてゆく敎科書と年老いてしまふ私を影は伸びゆく 

連れてきてしまつたやうだちいちやんの影をこんなにとほいところへ 

いさかひの歸路の電車をゆつたりとりかゝられてもだしてゐたり 

現し世はどちらだつたか春眠のをはりのやうに空は剝がれて 

〈注文を確定します〉先の世で添ひ遂げたひとに気付く権利の 

あれもこれも喩であるのだと吠えたてる人がゐてそこにわれがゐたこと 

ブレーキがすこしこはれてごめんねと自轉車がいふ それを蹴飛ばす 

リッドであることそしてみづからであるゆゑの水のやうになることそしてみづからでありながらみづからを消すこと ──永井陽子みづからの刄毀れ 

こはれろ、といふひとすぢの蜜垂りて垂りてきてやがて聲となりにき 

雪融けのあとをきたなく降る雨の泥沙がつまり私であつた 

塗り替へるやうに言葉を紡ぐとき垂れ込めて來てあす雨もよ 

色といふ魔に犯されて窯變す〈性癖〉の語の移ろひあはれ 

ひとりしづかに火酒含むときふいに來るフタリシヅカといふ花の名は