えんとつカフェ  フォロー 28 フォロワー 28 投稿数 98

気ままに営業してます。

埋め立てた更地をしばし青々と凪いだ海へと帰す月光 

ゆく夏を巻き戻すようリール巻く水辺の焼けた少年の腕 

息吸えば煙草の先があかあかと灯ってなつの闇を濃くする 

サイダーの壜に蓋して閉じ込める線香花火ときみと八月 

便箋にとまるとんぼの透きとおる影ごと送る残暑お見舞い 

夏の夜のおとぎばなしをめくるよう屋台のあかり次々灯る 

夏休み来るたび過ごす灯を消せば蛍の宿になる祖母の家 

木の幹に立てたギターを葉の影がつま弾く夏の午後の微睡み 

一行の短歌のように雨空を見上げしずかに道に立つきみ 

テーブルのポテトチップス荒天の海に似ていて波頭をつまむ 

古書店の棚をするりと抜けだして歩くいまだに名を持たぬ猫 

果たされない約束たちが半月のかたちで眠るあなたの小指 

古書店の棚をほのかに光らせて星を吐きだす宮沢賢治 

降る雨を麦雨とよべばカサの列透かして青い穂の海の見ゆ 

また今日もものがたりたち眠らせるため古書店の明かりが消える 

日陰から日陰にはしる子供らの髪にからまるプールの匂い 

魂はトランペットに込められて雲なびかせる夕陽の校舎 

銀ヤンマ野原で追いて七月の丘の風ごとつかまえる網 

食べ終えたスイカは匙を櫂にして縁側の凪ただよう小船 

灰色のビルの谷間に降る雨がカサで弾けて色が弾ける 

お湯をはる湯船の棺に身をひたし今日という日をそっと弔う 

半袖の腕のしろさは記さずに閉じゆく夏の日記帳のよう 

「滝よ」ってはしゃいだきみの声がもうマイナスイオンぼくに降らせる 

深海魚音なく泳ぐコンビニは夜にひかりを零す水槽 

章ごとにページを閉じて各停のようにあなたは本を旅する 

菜の花が咲く道ひとり靴紐を蝶々のように揺らしつつ行く 

駐められたバイクは斜め前をむき街の向こうの海を見ている 

猫の絵の切手を貼ったばっかりに行方不明になる春の文 

縄跳びの縄は世界とぼくを分け淋しさだけの繭にしている 

浮く雲のひとつになって水たまりふわり飛び越す白ワンピース