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ぼちぼちです

沈黙が積み上げられた廃棄車の窓にそれぞれそれぞれの空 

古書店の棚をするりと抜けだして歩くいまだに名を持たぬ猫 

果たされない約束たちが半月のかたちで眠るあなたの小指 

古書店の棚をほのかに光らせて星を吐きだす宮沢賢治 

降る雨を麦雨とよべばカサの列透かして青い穂の海の見ゆ 

また今日もものがたりたち眠らせるため古書店の明かりが消える 

日陰から日陰にはしる子供らの髪にからまるプールの匂い 

魂はトランペットに込められて雲なびかせる夕陽の校舎 

銀ヤンマ野原で追いて七月の丘の風ごとつかまえる網 

食べ終えたスイカは匙を櫂にして縁側の凪ただよう小船 

灰色のビルの谷間に降る雨がカサで弾けて色が弾ける 

お湯をはる湯船の棺に身をひたし今日という日をそっと弔う 

半袖の腕のしろさは記さずに閉じゆく夏の日記帳のよう 

「滝よ」ってはしゃいだきみの声がもうマイナスイオンぼくに降らせる 

深海魚音なく泳ぐコンビニは夜にひかりを零す水槽 

章ごとにページを閉じて各停のようにあなたは本を旅する 

菜の花が咲く道ひとり靴紐を蝶々のように揺らしつつ行く 

駐められたバイクは斜め前をむき街の向こうの海を見ている 

猫の絵の切手を貼ったばっかりに行方不明になる春の文 

縄跳びの縄は世界とぼくを分け淋しさだけの繭にしている 

浮く雲のひとつになって水たまりふわり飛び越す白ワンピース 

風船を澄んだ朝へと解き放ちそらの高さを確かめている 

オリオンはリボンのようできみが手を伸ばして澄んだ星空に結う 

ゆうぐれのジャングルジムから飛び降りるきみの背中にあった永遠 

夏服の少女が木陰駆けるときスカート魚のひれの揺らめき 

約束をかわす小指のかたちして水鳥たちは水面を覗く 

肩ごしの雲がつばさに見えたからあなたはきっと夏の住人 

まどろみのなか両耳は貝になり雨はしずかな波音になる 

公園のしたに秘密の町がありジャングルジムから飛べれば行ける 

ひかり透く水の清さをいろはすはトンボの翅の薄さでつつむ