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ぼちぼちです

ゆっくりと電信柱は歩きだす移動してゆく月にあわせて 

水平にポストに入れる恋文のきみへの思いこぼさないよう 

溶けだした今日のすべての悲しみを消し去るように湯の栓を抜く 

雨音がきみのことばを隠すからきみの本当の声が聞こえる 

まだ誰も借りたことない植物の図鑑のように少女は眠る 

海岸に捨てられている揺り椅子にときおり風が座りては去り 

足音もあまたの影も消え去って地下鉄ホームは夜に浮く島 

ベランダの陶器のみずにモンシロチョウ群れて四月の青空を吸う 

共犯者になって窓辺の瓶に挿す花ぬすびとのきみ手折る桜(はな) 

煙突が月のひかりに照らされて船めく窓の焼却施設 

缶ビール飲み干しこたつに寝ころべば猫のひたいほどの幸せ 

春風も通過してゆく陽だまりに猫ばかりいるシャッター通り 

コイン投げるように汽笛を上げ汽車が誰かの旅のはじまりを告ぐ 

さらさらと落つ水音に目覚めれば窓に傾く柄杓の星座 

きみがする青いピアスは揺れるたびぼくのこころで海を奏でる 

坂道をころがってゆくコーヒー缶からんからんと夜の音階 

ペダル漕ぐ速さで春はやってくる髪のリボンを風に泳がせ 

恋文の言葉が重くすこしだけ傾いで月を眺めるポスト 

月までは歩いて十年 満ち欠けをきみとながめて歩くのもいい 

窓に月差してあなたのつかの間の眠りに青い毛布をかける 

弦を弾くきみのゆびさき月のように光りわたしを夜にいざなう 

「元気だよ」豚骨ベースの北風が声を連れ去る公衆電話 

乗客を降ろしたあとは潮騒をのせて町へと帰る終バス 

川沿いのマンションの灯はだんだんと消えていつしか星座のかたち 

セロ弾きになって旅寝のそらのした奏でてみたい風の旋律 

浴槽はしずかな波に満たされて今日のわたしを透明にする 

軽やかに朝の階段駆けあがるきみはこころに小鳥飼うひと 

正確に風を捉える少年のはねた寝癖が指さす航路 

凪いだ海 灯台 雲がゆくり過ぐ春の車窓は春の額縁