時が満ち海が満ち月だって満ちこの手に残ったものなーんだ? 1
総人類蹂躙計画 手始めにお前からニャと飼い主を見る 10
脳髄を菌糸が巣食う列車にて 目を瞑り、あの蜜柑を夢む 0
聞いてくれヘラヘラ進む秒針を圧(へ)し折りたくて堪らないんだ 4
青春を殺した後に吸う煙草 闇夜に灯る線香花火 9
欠席で集合写真、左上 今はどれほど増えたのだろう 1
あの星もさぞ不満気でいるだろう 六等星に、勝手にされて 4
芒野(すすきの)を星座盤を抱きつつ駆けし子に南天は展(ひら)けり 2
私達、喜怒哀楽の綾取りが下手くそなのよ、だから泣くのよ 5
私達、毒素の構造式だから、過ちばかり犯し合うのよ 3
仰向けになればお前も分かるだろう 俺らにはただ、心臓しかない 2
これまでに犯した〈罪〉を積んでみる こればっかりは崩しに来ないか… 0
嫌になる言葉が一つ、また一つ 「言葉」という言葉もそのうちに 0
灰色の京都駅にて発車ベル聴き、空、仰ぎ見る一人戯曲 2
夜明け前国道劈くエンジンの重低音こそ実存と呼べ 1
曇天の下にしかない幸福もあるものだよと空に嘯く 7
飲めもしない熱燗を矢継ぎ早に注(つ)ぎ呷ってぐるりぐるりやせかい 5
夭折の才無きがゆえ海涯(うなはて)の彼方(あなた)へ行きし黒帽思う 1
「皆さんの愛を不正受給してます」キャッチコピーにでもどうですか 1
「凪」と「薙」綯い交ぜのまま夕凪が少女の涙を薙いだ八月 3
猿真似の煙草の火も消え夕間暮れ我が平成よ何処(いずこ)へ去りや 0
黒板に消し跡を見て立ち尽くす 僕等はあの時18だった 5
縁石の上を歩いていく少女 広げた両腕 美しき世界 3
神様がインターフォンを鳴らす時に限って僕は必ず不在 6
ポエトリーラッパーに命殴られた 血が走る走る闇裂く吼える 0